「手術を受けて、目はよく見えるようになったはずなのに、なぜか体調が悪くなってきました。」
そう話されたのは、70代の男性でした。
3週間前に左眼の白内障手術を受け、眼科では術後の傷も順調に治っていると説明されていました。
ところが、手術から5日ほど経った頃から、少しずつ頭痛、左耳の耳鳴り、強い首こりと肩こり、光をまぶしく感じる羞明が現れ始めました。
特に困っていたのが、スマートフォンで動画を見た後でした。
短時間見ているだけでも首の奥が固まり、頭痛が強くなり、それとほぼ同時に左耳の耳鳴りも大きく感じるようになります。
以前は問題なく楽しめていた動画視聴が、症状を悪化させるきっかけになっていました。
眼科では、
「手術部位は良好です。新しい見え方に慣れるまでには時間がかかり、3カ月ほどで落ち着く方もいます」
と説明を受けていました。
しかし、ご本人としては、目だけではなく、首や耳、頭にまで症状が広がっていることに不安があり、知人の紹介で当院へ来院されました。
最初に確認したのは、鍼施術を行ってよい状態か
白内障手術後に頭痛や羞明が現れた場合、最初から「首の筋肉が硬いから」「神経が過敏だから」と決めつけることはできません。
術後の炎症、眼圧の変化、感染、網膜や視神経の問題など、眼科で確認すべき病態が隠れていないかを考える必要があります。
また、急に生じた瞳孔不同に、強い頭痛、眼瞼下垂、複視、眼球運動障害、視力低下、悪心、手足の麻痺などが伴う場合には、眼科や脳神経領域での評価が優先されます。
この方は、眼科で術後の傷の状態を確認されており、急激な視力低下、強い眼痛、複視、眼瞼下垂、明らかな眼球運動麻痺などは認められていませんでした。
そのため、眼科での経過観察を続けていただくことを前提に、当院では眼球運動、顔面感覚、聴覚の左右差、頚部機能を確認しました。
なお、左耳だけに生じた片側性耳鳴りについては、鍼灸院の検査だけで原因を確定することはできません。
リンネテストとウェーバーテストは、伝音系と感音系の左右差を推測するための簡易的なスクリーニングです。持続する片側性耳鳴り、聴力低下、耳閉感、めまい、拍動性耳鳴りなどがある場合には、耳鼻咽喉科での純音聴力検査を含む評価が必要です。
首の筋肉には強い防御反応がみられました
頚部の動きを確認すると、回旋、側屈、伸展に可動域制限が認められました。
触診では、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部線維、後頭下筋群に強い圧痛がありました。
特に後頭下筋群と胸鎖乳突筋では、軽く圧迫しただけでも体が反射的に逃げるようなジャンプサインがみられました。
単に筋肉が硬くなっているというより、痛覚系の感受性が高まり、頭頚部を守るための防御性収縮が持続している状態と考えられました。
後頭下筋群は、後頭骨と上位頚椎を結び、頭部のわずかな角度調整や視線の安定に関係する筋群です。
スマートフォンの小さな画面を近距離で見続けるには、眼球を内側へ寄せる輻輳、焦点調節、両眼の像を一つにまとめる融像だけでなく、頭部を一定の位置に保つ頚部筋群の活動も必要になります。
この方の場合、視覚系の負荷が高まるほど頭部を固定しようとする力が強くなり、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、僧帽筋の持続収縮につながっていた可能性がありました。
神経学的検査で確認された左右差
神経学的検査では、左右の瞳孔径に差があり、対光反射もやや緩徐でした。
顔面感覚にも左右差が認められました。
聴覚の簡易検査であるリンネテストとウェーバーテストでも左右差があり、左耳の耳鳴りだけでなく、聴覚入力の左右差が存在している可能性が考えられました。
眼球運動では、動く対象を滑らかに追うパスートと、視線を素早く移動させるサッケードに大きな問題はありませんでした。
バランス機能についても、年齢を考慮すると大きな異常は認められませんでした。
一方で、近くを見るときの輻輳反射には、明らかな左右差がみられました。
視標を鼻に近づけると、両眼はいったん内側へ寄ります。
しかし、その状態を維持することができず、途中で片眼が外側へ開いてしまいました。
これは、眼球を内側へ動かす機能が完全に失われているのではなく、
「両眼を寄せ、左右の像を一つにまとめた状態を維持することが難しい」
状態と考えられます。
パスートやサッケードに大きな問題がない一方で、スマートフォンのような持続的近見で症状が悪化することを考えると、眼球を動かす速さや正確性よりも、調節・輻輳・融像を持続する機能に負荷が集中していた可能性があります。
眼内レンズになっても、毛様体筋への指令は消えません
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりに眼内レンズを挿入します。
天然の水晶体では、近くを見るときに毛様体筋が収縮し、チン小帯の張力が変化することで水晶体が厚くなり、眼の屈折力が増加します。
遠くを見るときには毛様体筋が弛緩し、水晶体が薄くなることで遠方へ焦点が合います。
一方、一般的な単焦点眼内レンズでは、天然水晶体のように厚みや曲率を大きく変えることができません。
そのため、基本的には焦点の位置が一定となり、近くを見るには眼鏡などによる屈折補正が必要になります。
ただし、水晶体が眼内レンズに置き換わっても、近くを見ようとする神経指令そのものが消失するわけではありません。
画像研究では、高齢者や眼内レンズ挿入眼においても、近見刺激に伴う毛様体筋の収縮能力が残存することが示されています。つまり、動眼神経副核から毛様体神経節を経て毛様体筋へ向かう遠心性の指令は、術後も働き続けると考えられます。
しかし、単焦点眼内レンズでは、毛様体筋が収縮しても、天然水晶体で起こるような十分な屈折力の変化は得られません。
眼内レンズの種類や支持構造によっては、毛様体筋の収縮に伴ってレンズがわずかに前方へ移動することがあります。しかし、生理的な近見刺激では移動がほとんど生じない例もあり、天然水晶体と同等の調節を再現するものではありません。
ここに、今回の症例を考えるうえで重要なポイントがあります。
「近くを見ようとする指令」と「実際のピント」が一致しない
近くのスマートフォンを見ると、神経系は近見反応を開始します。
近見反応は、単に毛様体筋が収縮するだけではありません。
一般的には、
・毛様体筋を収縮させる調節反応
・両眼を内側へ寄せる輻輳反応
・瞳孔を小さくする縮瞳反応
が連動して起こります。
脳からは「近くへピントを合わせる」という運動指令が出され、毛様体筋は実際に収縮します。
ところが、眼内レンズが単焦点であれば、神経系が期待したほど屈折力は変化しません。
つまり、
近くを見ようとする指令は出ている
↓
毛様体筋は収縮している
↓
輻輳と縮瞳も起こる
↓
しかし、期待したほど網膜像のぼやけが改善しない
という状態が生じる可能性があります。
このとき神経系は、ぼやけを修正しようとして、さらに調節や輻輳の指令を追加することがあります。
しかし、屈折力が変化しにくい眼内レンズに対して調節指令を増やしても、期待した視覚結果は得られません。
その結果、調節指令、毛様体筋の収縮、網膜に映る像、両眼の輻輳反応の間に、一時的な不一致が生じる可能性があります。
毛様体筋やチン小帯周辺からの機械感覚が、人の調節感覚にどの程度関係しているかは、まだ完全には解明されていません。
そのため、「毛様体筋からのフィードバック異常が原因」と断定することはできません。
より正確には、
近見の運動指令に対して、予測していた屈折変化と網膜像の変化が得られない、視覚系の感覚運動不一致
として捉える方が妥当です。
調節と輻輳は互いに独立していません
近くを見るとき、調節と輻輳は相互に連動しています。
毛様体筋へ調節指令が出ると、それに伴って両眼を内側へ寄せる調節性輻輳が生じます。
反対に、両眼を内側へ寄せる輻輳指令から、調節反応が誘発される経路もあります。
天然水晶体であれば、調節指令に応じて屈折力が変化し、網膜像のぼやけが減少します。
しかし、単焦点眼内レンズでは、調節指令を出しても屈折力がほとんど変わりません。
それでも調節性輻輳は誘発される可能性があります。
そのため、
「ピントを変えられないのに、眼を内側へ寄せる指令だけが増える」
という状態になることがあります。
さらに、今回の症例では左眼のみが白内障手術後でした。
右眼に天然水晶体が残っている時期であれば、左右眼で、屈折状態、像の大きさ、明るさ、コントラスト、焦点深度、調節に対する反応が異なる可能性があります。
脳は、条件の異なる左右の像を一つにまとめなければなりません。
白内障手術そのものが、すべての人に新しい両眼視異常を起こすわけではありません。前向き研究では、術前から存在していた輻輳不全などの両眼視機能の問題が、術後にも症状を生じやすくする重要な要因であることが示されています。
したがって今回の症例では、
・左眼の眼内レンズ化による光学的条件の変化
・左右眼から入る像の質の違い
・調節指令と実際の屈折変化の不一致
・輻輳と融像の維持困難
・術前から潜在していた可能性のある輻輳機能の弱さ
などが重なり、スマートフォンを見たときの負荷を増幅していた可能性があります。
検査で「一度は寄るものの、片眼が外れて輻輳を維持できない」という所見がみられたことも、この仮説と整合します。
眼の手術と三叉神経の関係
角膜、結膜、虹彩などの感覚情報は、主に三叉神経第1枝である眼神経を介して脳幹へ伝えられます。
特に角膜は感覚神経が非常に豊富な組織です。
白内障手術では角膜に小さな切開を加えるため、眼科的に術創が良好であっても、角膜神経や眼表面からの感覚入力が、術前とまったく同じ状態へすぐに戻るとは限りません。
合併症のない白内障手術後でも、角膜神経線維の数や形態に変化が生じ、その変化が数カ月間観察された研究があります。
これは、「傷が治っていない」という意味ではありません。
組織としての創傷治癒と、感覚神経系が新しい環境へ適応する過程は、必ずしも同じ速度では進まないということです。
今回の症例では、術後5日目頃から症状が徐々に出現し、顔面感覚の左右差、瞳孔不同、対光反射の緩徐化、羞明が認められました。
そのため、
眼表面や眼内組織から三叉神経へ入る感覚入力の変化
+
眼内レンズによる新しい視覚条件への再適応
+
調節―輻輳―融像系の不一致
が、同時に存在していた可能性を考えました。
なぜ眼の問題が、頭痛と強い首こりにつながるのか
眼や顔面から入る侵害受容情報は、三叉神経を介して脳幹の三叉神経脊髄路核へ伝わります。
この領域では、三叉神経からの感覚入力と、上位頚髄からの感覚入力が機能的に収束します。
人を対象とした研究でも、三叉神経領域と大後頭神経領域の刺激が相互の感覚閾値に影響することが示されており、三叉神経系と上位頚髄系の機能的な連結を支持しています。
そのため、眼や顔面から三叉神経へ入力が増加すると、頭痛だけでなく、上位頚髄と関係する後頭下部や頚部の筋緊張にも影響する可能性があります。
反対に、後頭下筋群や頚部組織から侵害受容入力が増加すると、三叉神経領域である前頭部や眼窩周囲へ痛みが広がることがあります。
今回のように、眼からの入力と頚部からの入力が同時に増加すると、
眼からの三叉神経入力
↓
頭痛や羞明の増加
↓
視線を安定させるための頭頚部固定
↓
後頭下筋群、胸鎖乳突筋、僧帽筋の防御性収縮
↓
上位頚髄からの侵害受容入力の増加
↓
さらに頭痛が増幅する
という循環が成立する可能性があります。
羞明は「目が明るさに慣れていない」だけではありません
白内障手術後は、濁っていた水晶体が透明な眼内レンズに置き換わることで、術前よりも多くの光が網膜へ届くようになります。
しかし、羞明は単純に「光の量が増えた」という問題だけではありません。
動物実験では、強い光刺激によって三叉神経脊髄路核の侵害受容ニューロンが活動する経路が確認されています。
つまり、光の入力は視覚として処理されるだけでなく、三叉神経性の痛みや不快感を増強する可能性があります。
今回の症例では、術後の光入力増加に加えて、眼表面からの三叉神経入力、調節と輻輳の不一致、頚部の防御性収縮が重なり、通常の明るさでも不快に感じる状態になっていた可能性があります。
左耳の耳鳴りとの関係
耳鳴りについては、眼や三叉神経だけで直接説明することはできません。
片側性耳鳴りには、内耳、聴神経、聴覚伝導路などの評価が必要な場合があります。
一方で、耳鳴りの大きさや音質が、首や顎の運動、筋収縮、皮膚や筋肉への刺激によって変化することがあります。
頭頚部に関連した体性耳鳴りの症例群では、頚部や顎の症状と同じ側に耳鳴りが現れる特徴が報告され、脊髄三叉神経系などの体性感覚入力が蝸牛神経核の活動を変調するモデルが提示されています。
今回の方では、スマートフォンを見たときに、首こり、頭痛、左耳の耳鳴りがほぼ同時に強くなっていました。
また、頚部筋群の圧痛と筋緊張が軽減するにつれて、耳鳴りも小さくなりました。
この経過から、頚部と三叉神経系からの感覚入力が、左耳の耳鳴りを直接発生させたと断定することはできませんが、耳鳴りの知覚強度を増幅する変調因子になっていた可能性は考えられます。
鍼施術で狙ったのは、筋肉だけではありません
施術では、顔面部への刺鍼と、胸鎖乳突筋、僧帽筋、後頭下筋群へのトリガーポイント鍼治療を行いました。
顔面部への刺鍼では、眼球や白内障手術の創部へ直接施術することはありません。
三叉神経の各枝が分布する顔面部へ、安全な方向と深度で体性感覚入力を加え、左右差が認められた顔面感覚がどのように変化するかを確認しました。
頚部では、ジャンプサインがみられた胸鎖乳突筋、僧帽筋、後頭下筋群に対して、刺激量を抑えながらトリガーポイント鍼治療を行いました。
目的は、硬い筋肉を力で緩めることだけではありません。
頚部筋群から上位頚髄へ持続的に入る侵害受容入力を減らし、三叉神経系と頚髄系の感覚負荷を下げることを重視しました。
その後、神経学的検査の反応を確認しながら、機能神経学的アプローチを加えました。
眼球エクササイズは「毛様体筋を鍛える運動」ではありません
自宅では、スマートフォンによる動画視聴を一時的に控えていただき、短時間の眼球エクササイズを行ってもらいました。
ここでの眼球エクササイズは、眼内レンズのピント調節力を回復させるものではありません。
単焦点眼内レンズでは、毛様体筋を鍛えても、天然水晶体のような調節機能が戻るわけではありません。
目的は、
・両眼を寄せた状態を保つ
・左右眼の像を一つにまとめる
・融像が可能な範囲を少しずつ広げる
・視覚と頭頚部の協調を再学習する
・近見刺激に対する過剰な防御反応を減らす
ことです。
この方は、視標を近づけると途中で片眼が外れていたため、強い寄り目運動は行いませんでした。
片眼が外れる手前の距離で短時間だけ視標を保持し、頭痛、羞明、耳鳴り、首こりが増えない範囲で終了しました。
眼球運動の訓練は、強く行うほど効果が高まるものではありません。
神経系が処理できる範囲を超えると、むしろ症状を増悪させる可能性があります。
そのため、距離、時間、視標の速度、背景の明るさを、その日の反応に合わせて調整しました。
週1回、4回目には症状がほぼ消退
施術は週1回の頻度で行いました。
初回後には、首の回旋がしやすくなり、頭痛と首こりの強さに変化がみられました。
左耳の耳鳴りは残っていましたが、音が小さく感じられる時間が出てきました。
2回目には、スマートフォンを短時間見た際の症状増悪が、以前より軽くなっていました。
光への過敏さにも変化がみられ、輻輳検査では、片眼が外れるまでの時間が少し延長しました。
3回目には、日常生活で頭痛を感じる時間が大幅に減少しました。
首と肩の強い緊張も軽減し、左耳の耳鳴りは、静かな場所で意識するとわずかに感じる程度になりました。
4回目の施術時には、頭痛、首こり、肩こり、羞明はほぼ消退していました。
左耳の耳鳴りも、日常生活ではほとんど気にならない状態となり、スマートフォンも短時間から再開できるようになりました。
今回の症例から考えられること
今回の症状は、白内障手術の傷だけでは説明できないものでした。
一方で、「首がこっていただけ」と考えるのも十分ではありません。
臨床所見を総合すると、
1.手術後の角膜・眼表面から三叉神経へ入る感覚入力の変化
2.透明な眼内レンズによる光入力と視覚条件の変化
3.毛様体筋への調節指令と、眼内レンズで得られる屈折変化の不一致
4.左眼と右眼の光学的条件の左右差
5.調節―輻輳―融像を維持する負荷
6.後頭下筋群、胸鎖乳突筋、僧帽筋の防御性収縮
7.三叉神経系と上位頚髄系における感覚入力の相互増幅
8.頚部・三叉神経入力による耳鳴り知覚の変調
が重なっていた可能性があります。
特に重要なのは、眼内レンズ挿入後も、近見時の毛様体筋収縮と近見反応が残存する点です。
単焦点眼内レンズでは、近くを見ようとする神経指令が出ても、それに見合う屈折力の変化が得られません。
そのため、
調節指令、毛様体筋や眼内組織からの感覚情報、実際の網膜像、輻輳反応の間に一時的な感覚運動不一致が生じ、眼精疲労、羞明、頭痛、頚部の防御性緊張を増幅した可能性
があります。
ただし、これは今回の検査所見と症状経過から立てた臨床仮説です。
白内障手術や眼内レンズが、直接、頭痛や耳鳴りを起こしたと証明するものではありません。
また、術後の自然な神経適応が進んだ時期と、施術期間が重なった可能性もあります。
鍼施術、スマートフォンの制限、眼球エクササイズのうち、どれがどの程度改善に寄与したかを、個別に証明することもできません。
「慣れるまで」を、ただ我慢するだけにしない
白内障手術後には、新しい見え方へ慣れるための時間が必要です。
眼科で「3カ月ほどで慣れてくる」と説明されたことも、決して間違いではありません。
しかし、その適応期間中に、頭痛、羞明、首こり、肩こり、耳鳴りによって生活が制限されているのであれば、ただ我慢する以外にできることがないとは限りません。
眼科的な問題がないかを確認する。
聴覚に問題がないかを確認する。
左右の瞳孔、顔面感覚、眼球運動、輻輳、両眼視、頚部機能を確認する。
そして、減らすべき刺激と、少しずつ再学習させる刺激を分けて考える。
見えるようになったはずの世界が、突然まぶしく、つらく感じられる。
そのようなとき、問題は眼球だけにあるとは限りません。
新しくなった眼から入る情報に対して、脳、三叉神経、眼球運動系、首の筋肉が、まだ同じ速度で適応できていないことがあります。
今回の症例は、眼、顔、首、耳、頭痛を別々の症状として見るのではなく、一つの感覚運動ネットワークとして評価することの大切さを教えてくれました。
※本記事は一症例の経過をもとに、個人が特定されないよう内容を一部調整しています。同様の症状でも原因や経過は異なります。
白内障手術後に、強い眼痛、急激な視力低下、強い充血、悪心・嘔吐、急激な頭痛、新たな瞳孔不同、眼瞼下垂、複視、手足や言葉の異常が現れた場合は、鍼灸院ではなく、眼科または救急医療機関へご相談ください。
片側性耳鳴りが持続する場合や、聴力低下、耳閉感、めまい、拍動性耳鳴りを伴う場合には、耳鼻咽喉科での評価が必要です。
参考文献
1.Strenk SA, et al. Magnetic resonance imaging of aging, accommodating, phakic, and pseudophakic ciliary muscle diameters. Journal of Cataract and Refractive Surgery. 2006.
2.Findl O, et al. Intraocular lens movement caused by ciliary muscle contraction. Journal of Cataract and Refractive Surgery. 2003.
3.Kriechbaum K, et al. Stimulus-driven versus pilocarpine-induced biometric changes in pseudophakic eyes. Ophthalmology. 2005.
4.Han E, et al. Cataract surgery is not associated with post-operative binocular vision anomalies in age-related cataract patients. Ophthalmic and Physiological Optics. 2022.
5.Mastropasqua L, et al. Corneal involvement in uneventful cataract surgery: an in vivo confocal microscopy study. Ophthalmologica. 2014.
6.Busch V, et al. Functional connectivity between trigeminal and occipital nerves revealed by occipital nerve blockade and nociceptive blink reflexes. Cephalalgia. 2006.
7.Hoffmann J, et al. Experimental evidence of a functional relationship within the brainstem trigeminocervical complex in humans. Pain. 2021.
8.Okamoto K, et al. Bright light activates a trigeminal nociceptive pathway. Pain. 2010.
9.Levine RA. Somatic craniocervical tinnitus and the dorsal cochlear nucleus hypothesis. American Journal of Otolaryngology. 1999.