なぜ検査は異常なしなのに、つらいのか?
なぜ薬が効きにくいのか?
はじめに
病院で「異常はないですよ」と言われたのに、つらさは残ったまま。
「胃カメラでは異常なしでした。」
「血液検査も問題ないです。」
そう言われて、少し安心したはずなのに。
それでも、
-
食後になるとお腹が苦しい
-
少量でお腹がいっぱいになる
-
胃が重く、気持ち悪い
-
吐き気が出る
こうした症状が、毎日のように続いている。
機能性ディスペプシア(FD)で来院される方の多くが、
この説明のつかないつらさに長く悩んでいます。
まず大切なこと
これは「気のせい」ではありません
最初に、はっきりお伝えしておきたいことがあります。
機能性ディスペプシアは、決して気のせいではありません。
ただし、その正体は
「胃に傷がある病気」ではなく、
胃の働きをコントロールしている“神経の調整不全”です。
胃は勝手に動いているわけではない
胃は、自分の意思で動いているわけではありません。
-
食べた量
-
食べるスピード
-
そのときの緊張や安心感
こうした情報をもとに、脳と神経が今はどう動くかを判断しています。
この司令塔にあたるのが、
-
迷走神経
-
脳幹
-
中脳
-
小脳
といった、無意識の神経ネットワークです。
機能性ディスペプシアの本質
FDの多くは、
-
胃そのものは正常
-
でも
-
胃を動かす指令が乱れている
という状態です。
そのため、
-
胃酸を抑える薬
-
蠕動を促す薬
を使っても、
「一時的には楽だけど、根本的には変わらない」
という経過をたどりやすくなります。
なぜ薬が効きにくいのか①
胃は悪くないのに、胃だけを治そうとしている
胃薬は、とても優れた薬です。
ただし、それが力を発揮するのは、
-
炎症
-
潰瘍
-
明確な機能低下
がある場合です。
FDでは、
-
胃に傷はない
-
胃酸も正常範囲
それでもつらい。
このとき問題になっているのは、
胃そのものではなく、神経の“指令の出し方”です。
なぜ薬が効きにくいのか②
胃が動かないより「感じすぎている」
FDのもう一つの特徴は、
内臓感覚の過敏さです。
本来なら、
「少し膨らんだな」
で済む刺激が、
「苦しい」
「気持ち悪い」
として強く意識に上ってしまう。
これは、
感覚のブレーキ役をしている神経(中脳・脳幹)が疲れている状態
と考えられます。
なぜ薬が効きにくいのか③
神経疲労は、薬が最も苦手な分野
神経の疲労とは、
-
長時間の緊張
-
浅い呼吸
-
目の酷使
-
情報過多
といった、生活の積み重ねで起こります。
ここは、
「飲めば治る」という単純な話になりにくい領域です。
機能性ディスペプシアの方に共通する現代的背景
当院で多くのFDの方を診ていて、
非常に共通している要素があります。
① 長時間のスマホ使用
-
近距離で目を固定
-
輻輳し続ける
-
中脳が休めない
結果として、
-
下行性抑制系が働きにくくなる
-
内臓感覚が過剰に意識される
② 呼吸の低下
スマホを見る姿勢は、
-
頭が前に出る
-
胸が固まる
-
横隔膜が動きにくい
この状態が続くと、
-
迷走神経の入力が低下
-
胃の受容性弛緩がうまくいかない
食後の不快感が出やすくなります。
③ 情報過多とSNS
SNSは、
-
予測不能な刺激
-
断続的な報酬
を繰り返し与えます。
これは、
-
ドーパミン系を過剰に刺激
-
交感神経を下げにくくする
胃は、
安心しているときに最もよく動く臓器です。
紙の本は読めるのに、スマホはつらい理由
「スマホはしんどいけど、本は読めます」
この言葉は、FDの方から本当によく聞きます。
理由は明確です。
| スマホ | 紙の本 | |
|---|---|---|
| 視距離 | 近距離固定 | 変化する |
| 光 | 自発光 | 反射光 |
| 情報 | 刺激的・断続 | 連続的 |
| 神経 | 覚醒モード | 落ち着いた処理 |
紙の読書は、
脳幹・自律神経にとって負担が少ない活動です。
だから「薬が悪い」のではない
誤解しないでほしいのは、
-
薬が間違っている
-
病院が悪い
という話ではありません。
役割が違うだけです。
-
薬:症状を抑える
-
神経調整:環境を整える
両者は対立するものではありません。
当院で大切にしている視点
はる鍼灸整骨院では、
機能性ディスペプシアを
「神経の疲労が、胃に現れている状態」
として捉えます。
そのため、
-
胃だけを見ない
-
呼吸
-
眼の使い方
-
首・後頭部
-
自律神経の切り替え
こうした部分を丁寧に確認します。
最後に
多くの方が口にする言葉
「ちゃんと理由があったんですね」
長く続いた不調は、
あなたのせいではありません。
体の仕組みと、今の生活が少し合わなくなっていただけ
かもしれません。
出典・参考文献
-
Tack J, et al. Functional Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology.
-
Van Oudenhove L, et al. Brain–gut axis and functional dyspepsia. Nat Rev Gastroenterol Hepatol.
-
Mayer EA. The neurobiology of stress and gastrointestinal disease. Gut.
-
Berthoud HR. Vagal and hormonal gut–brain communication. Physiol Rev.
-
Craig AD. How do you feel? Interoception and the neuroanatomical basis of feelings. Nat Rev Neurosci.
-
Porges SW. The polyvagal theory.
-
Strigo IA, et al. Descending modulation of pain and visceral sensation.