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意外な関係、そしてその深い「神経のつながり」

はじめに:まさか「肩こり」が原因だったなんて

 

 

こんにちは。

 

大阪府枚方市の はる鍼灸整骨院 院長、島井浩次です。

 

私は、鍼灸と機能神経学(Functional Neurology)を組み合わせ、

 

“痛みや不調を神経の働きから整える”施術を行っています。

 

その中でよく聞くのが、

 

「肩こりが強くなると、歯茎まで腫れてくる」という声です。

 

歯科で検査しても異常が見つからない。

 

薬を使っても一時的にしか治まらない。

 

そんな悩みを抱える方は少なくありません。

 

実際、肩こりと歯茎の腫れには密接な関連があります。

 

それは偶然ではなく、神経・血流・免疫のネットワークが同時に影響を受けているサインです。

 

この記事では、生理学・神経学・機能神経学・生化学の観点から、

 

「肩こりと歯茎の腫れ」がどのように関わっているのかを整理していきます。

 

そして、その悪循環をどのように断ち切るかを解説します。

 

 

 

生理学的つながり:血流とリンパの“渋滞”が生む影響

 

■ 血液の流れは生命のリズム

 

肩や首の筋肉がこわばると、血流やリンパの流れが悪くなります。

 

とくに僧帽筋・肩甲挙筋・胸鎖乳突筋は、頭部や顔面へ向かう血管・リンパ管の“通り道”にあたります。

  • 肩のこりで鎖骨下静脈や頸静脈の還流が低下

  • 顎下や耳下腺リンパ節の排出が滞る

  • 結果として歯肉の微小循環が悪化し、腫れや熱感が出やすくなる
     

血管は単なる“管”ではなく、免疫細胞や酸素を運ぶ道でもあります。

その流れが滞ると、まず末端、つまり歯茎のような粘膜部分にトラブルが起こりやすくなります。

 

 

 

神経学的つながり:三叉神経と頸神経の“交差点”

 

■ 「顔」と「首」は脳の中でつながっている

歯茎の感覚を伝えるのは三叉神経(第2枝・第3枝)です。

一方で、首や肩の感覚は頸神経叢(C1〜C3)や副神経(XI)によって制御されています。

この二つの神経系は、脳幹(延髄〜橋)で

「三叉頸反射性複合体(trigeminocervical complex)」として交わっています。


そのため、首や肩の筋肉が強く緊張すると、三叉神経核が興奮しやすくなり、

歯茎や顔面の感覚にも影響が及びます。

 

■ 肩こりが“三叉神経”を刺激する流れ

  1. 肩・首の筋肉が過緊張

  2. 頸筋紡錘からの入力が過剰になる

  3. 延髄で三叉神経核への連絡が増える

  4. 顔面や歯茎の感覚神経が過敏に反応

  5. 腫れやムズムズ感を強く感じやすくなる
     

肩こりが、神経を通して歯茎の感覚過敏を引き起こす構造がここにあります。

 

 

 

機能神経学的視点:姿勢と脳のループ


■ 姿勢の乱れが神経のノイズを生む


長時間のデスクワークやスマートフォンの使用によって、頭部が前方に傾くと、

首や肩の筋肉は常に緊張状態になります。

この姿勢は、筋肉のセンサー(筋紡錘)を通じて小脳や延髄に過剰な情報を送り続けます。

結果として、三叉神経運動核や顔面筋群の出力バランスが乱れ、

歯茎や顎関節にも影響が出ます。
 

  • 咬筋や側頭筋の過緊張 → 歯根膜の圧力上昇

  • 顎関節の偏位 → 歯茎の血流低下

  • 三叉神経核の興奮 → 違和感や痛みの増幅
     

つまり、姿勢の乱れが脳幹の働きを変え、結果的に歯茎の炎症感覚を強めてしまいます。

 

 

■ 小脳と迷走神経の関係

小脳は、運動の調整だけでなく、自律神経の微調整にも関与しています。
肩こりで頸部からの入力がアンバランスになると、小脳と延髄の連携が乱れ、交感神経が優位になります。

その結果:

  • 唾液分泌が減り、口内が乾燥する

  • 血管が収縮し、歯茎の酸素供給が低下する

  • 副交感神経が抑制され、粘膜免疫(IgA分泌)が落ちる
     

こうして、歯茎は腫れやすく治りにくい状態になります。

 

 

 

生化学的メカニズム:ストレスが生む“微炎症”

 

■ コルチゾールが引き起こす慢性反応
 

肩こりは、筋肉だけでなくホルモンバランスにも影響します。
交感神経が緊張すると、副腎からストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され続けます。

慢性的にコルチゾールが高い状態では、

  • 免疫細胞の働きが鈍くなる

  • 炎症が長引く

  • 血管が収縮し、酸素供給が低下する
     

こうした生化学的変化が、歯茎の腫れやすさを助長します。

 

 

■ 筋肉の乳酸とpH変化

肩の筋肉が酸素不足になると乳酸が蓄積し、局所が酸性に傾きます。

この酸性化が痛覚受容体を刺激し、交感神経をさらに活性化させます。

末梢の血流が減ることで、歯茎のpHも下がり、細菌が増殖しやすくなります。

肩の緊張と歯茎の腫れが連動する背景には、こうした化学的環境の変化も関係しています。
 

 

 

症例紹介:肩こりと歯茎の腫れが同時に軽くなった例
 

● 症例:40代女性・事務職

主訴:右肩のこりと右上歯茎の腫れ。歯科では異常なし。

検査結果:

  • 右僧帽筋・胸鎖乳突筋の過緊張

  • 舌の右偏位、顎関節の軽度のズレ

  • 右眼の追従運動に乱れ(小脳右側の機能低下)

施術内容:

  1. 頸部トリガーポイント鍼

  2. 顎関節周囲の筋緊張を調整

  3. 三叉神経第3枝への微刺激(鍼+温熱)

  4. 呼吸法による横隔膜リリース

  5. 耳介迷走神経刺激による副交感神経活性化
     

経過:

3回の施術で歯茎の腫れが軽減し、6回で再発が見られなくなった。
「肩も歯も同時に軽くなった」と笑顔で話されました。

 

 

 

統合メカニズムのまとめ
 

姿勢不良・肩こり

頸筋紡錘入力↑ → 小脳・延髄興奮

三叉神経核過興奮 → 歯茎の感覚過敏

交感神経優位 → 血流低下・唾液減少

免疫低下 → 歯肉炎・腫脹
 
 
 
 
 

セルフケアのポイント

 

① 呼吸を整える(5-7呼吸法)

5秒吸って、7秒かけて吐く。

呼気を長くすることで迷走神経が働きやすくなり、歯茎の血流も改善する。

 

② 姿勢をリセット

背中を壁につけ、あごを軽く引く。

肩をすくめて下ろす動きを数回行うと、頸部の血流が促される。


 

③ 咬筋をゆるめる

頬の中央を円を描くようにマッサージ。

食いしばりを減らすだけで、歯茎の炎症感が落ち着くことがある。

 

 

 

当院のアプローチ


当院では、症状の出ている部位だけでなく、

全身の神経バランスを整えることを重視しています。
 

  • トリガーポイント鍼(僧帽筋・咬筋・胸鎖乳突筋)

  • 三叉神経核・迷走神経核への神経調整

  • 呼吸リハビリ・姿勢指導

  • 耳介刺激による自律神経バランス調整
     

結果として、「肩こりが楽になったら歯茎の腫れも消えた」という声を多くいただいています。

 

 

 

“肩こり”は体のメッセージ


肩こりは、筋肉の問題に見えて、実は“脳と体の対話の乱れ”です。

そして歯茎の腫れは、その対話がうまくいかなくなった結果として現れる信号でもあります。

体はいつも、小さなサインで「無理をしている」と教えてくれます。

その声に気づき、神経のリズムを整えることが、本当の意味での回復につながります。

 

 


参考・出典論文

  1. Bartsch T, Goadsby PJ. The Trigeminocervical Complex and Migraine. Current Pain and Headache Reports, 2003.

  2. Wang K et al. Autonomic nervous system and oral health. Frontiers in Oral Health, 2022.

  3. Craig AD. Interoception and the sense of the physiological condition of the body. Nature Reviews Neuroscience, 2002.

  4. Okeson JP. Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion. Mosby, 2020.

  5. Sato M et al. Effects of neck muscle tension on cerebral blood flow. Journal of Applied Physiology, 2017.

  6. Thayer JF, Lane RD. Neurovisceral integration model. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 2009.

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