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足底腱膜炎の真の原因は“神経系の不均衡”

はじめに  「炎症」では説明できない痛み


こんにちは。

大阪・枚方市の「はる鍼灸整骨院」院長、島井浩次です。

日常の臨床で「足底腱膜炎」と診断された方を拝見することは少なくありません。

朝起きて一歩目が痛い、歩くと足の裏が突っ張る、長く立っているとズキズキしてくる……。

整形外科では「足底腱膜炎=足の裏の腱膜に炎症が起きている」と説明され、

湿布やインソール、ストレッチなどで対応するのが一般的です。

ところが、実際には「炎症がないのに痛む」「安静にしても再発する」方が多く、

中には半年、一年と続くケースも少なくありません。

では、この痛みの“正体”は何なのか。

今回の記事では、「炎症」ではなく「神経系の不均衡」から足底腱膜炎を読み解く

新しい視点をお伝えしたいと思います。

 

オーバーユーズという仮説の限界


一般的に足底腱膜炎は「使いすぎ」が原因とされます。

長時間の立ち仕事、ランニング、ハイヒール、急な運動開始など。

しかし、同じ環境にいても発症する人としない人がいます。

つまり、「使いすぎ=炎症」だけでは説明がつかないのです。

実際にエコー検査やMRIで炎症所見がないのに痛みを訴える方も多く、

医学的には「足底腱膜痛症」と呼ばれる非炎症性タイプが存在します。

では、なぜ炎症がないのに痛むのか?

その背景にあるのが「神経系の不均衡」です。




神経系のバランスが崩れると、身体は“誤作動”する



小脳・前庭系の左右差がつくる「使い方の偏り」


私たちの身体の動きは、単なる筋肉の働きではなく、

脳(特に小脳と前庭系)が常に「姿勢・バランス」を微調整しています。

しかし、睡眠不足やストレス、視覚過多(スマホ・PC)などによって

このバランス中枢の左右差が生じると、

歩行や立位での荷重がどちらか一方に偏ります。

その結果、ある側の足底筋群や腱膜に過剰な張力が集中し、

「オーバーユーズ」が起こるのです。

つまり、“使いすぎた”のではなく、“同じ使い方しかできなくなっている”のです。

 

 

 

筋トーンの異常が“静かな炎症”を呼び込む

トーン異常=筋の過緊張


神経の出力は、筋肉を「オン・オフ」ではなく「トーン(張り)」で調節しています。

小脳や脊髄の制御バランスが崩れると、

一部の筋だけが常に「オン」の状態で働き続けます。

この持続的収縮により筋内血流は減少し、

酸素が足りなくなり、ATPが枯渇し、乳酸などの代謝産物が蓄積します。

これが“代謝性炎症”の始まりです。

見た目に腫れがなくても、組織レベルでは

「酸欠による化学的ストレス」が進行しています。

 

 

 

神経性炎症というもうひとつの炎症


持続的な筋トーン異常は、C線維(痛覚神経)の慢性興奮を招きます。

その興奮が軸索を逆流するように、

末梢に神経ペプチド(Substance P, CGRPなど)を放出し、

毛細血管を拡張させ、肥満細胞からヒスタミンを遊離させる。

これが神経性炎症(neurogenic inflammation)です。

つまり、局所の炎症は「使いすぎ」ではなく

“神経の過興奮が引き起こす炎症”なのです。

そしてこの神経性炎症を促進する大きな要因が、

私たちの生活習慣に潜んでいます。

 

 

 

不均衡を生む生活習慣の3要素
 

栄養・睡眠・刺激

 

 

(1)栄養 ― 神経の燃料不足がはじまり

神経活動には膨大なエネルギーが必要です。

ATPを作るためのブドウ糖・ビタミンB群・マグネシウム・酸素が不足すると、

ニューロンは“省エネモード”になり、過敏で不安定になります。


現代人に多いパターンがこちらです。

状態 結果
糖質制限過多・朝食抜き 低血糖 → 小脳・脳幹の機能低下
精製糖・カフェイン過剰 血糖スパイク → 自律神経不均衡
脂質不足(オメガ3欠乏) 膜流動性低下 → 神経伝達速度の低下
ミネラル欠乏(Mg・Zn) ATP合成障害 → 神経疲労

結果として、トーン制御を担う神経ネットワークがエネルギー切れを起こし、

左右の小脳・前庭核の働きに差が生じます。

その小さなズレが、歩行や立位の重心偏位を生み出し、

一方の足底腱膜に負荷を集中させます。

 

 

(2)睡眠 ― 神経の再調整ができない

睡眠は神経にとって“毎晩のメンテナンス時間”です。

グリア細胞が老廃物を掃除し、脳波が同期し、

感覚情報が整理される時間帯です。


睡眠不足が続くと

  • 小脳・前庭・大脳皮質の**同期性(coherence)**が低下

  • PAG(中脳水道周囲灰白質)やRVM(延髄吻側腹内側核)など
     痛みを抑えるシステムの働きが鈍る

  • 交感神経優位が続き、末梢血管が収縮
     

結果として、「治る力」が眠らないまま翌日を迎える状態になります。

朝起きたときの足底痛は、実はこの神経のリセット不全のサインでもあるのです。

 

 

(3)刺激 ― 現代人の「入力バランス崩壊」

私たちの脳は“入力と出力のバランス”で保たれています。

ところが、現代生活ではその入力が極端に偏っています。

偏った刺激 結果
スマホ・PC中心の生活 視覚優位 → 前庭入力低下 → バランス感覚鈍化
デスクワーク・運転姿勢 体幹固定 → 下肢感覚低下、荷重偏位
強いストレス 交感神経過緊張 → 筋トーン上昇・冷え・疼痛感受性亢進

脳は入力された情報の多い側を“信頼”します。

その結果、体性感覚の入力が減れば減るほど、

身体地図(Body schema)は歪み、

足底への力のかけ方が偏っていくのです。

 

 

 

神経系不均衡→筋緊張→炎症の生理的ループ
 

  1. 生活習慣の乱れ(栄養・睡眠・刺激)
      ↓

  2. 神経活動の左右差・ATP低下・過興奮
      ↓

  3. 小脳・前庭・運動野の不均衡
      ↓

  4. 筋トーン調整(γループ)破綻
      ↓

  5. 局所的オーバーユーズ・虚血・代謝性炎症
      ↓

  6. 神経性炎症・痛覚過敏
      ↓

  7. 炎症慢性化・再発ループ
     

この流れが、
「なぜ安静にしても再発するのか」
「なぜ左右どちらかに集中するのか」
を神経学的に説明してくれます。

 

 

 

治療は「神経の再同期」から始まる

鍼灸 × 機能神経学の統合アプローチ


はる鍼灸整骨院では、

「炎症を抑える」のではなく「神経の再同期」を目的に施術を行います。

  • 末梢刺鍼:Aδ・C線維を介してPAG(下行性痛覚抑制系)を賦活

  • 顔面・耳介刺激:三叉神経を介して迷走神経反射を誘発し、抗炎症経路を活性化

  • 小脳・前庭アプローチ:眼球運動・バランス刺激によりトーン制御を再構築

  • 呼吸調整:迷走神経の活動を高め、交感優位からの脱出を図る
     

これらの組み合わせで、
「筋トーンの再設定 → 血流回復 → 神経性炎症の鎮静」という
生理的ルートを辿ります。

 

 

 

生活習慣の“リハビリ”


痛みを治すことと同じくらい重要なのが、

神経系を整える生活習慣のリハビリです。

 

 栄養:神経のエネルギーを養う

  • 朝に炭水化物とタンパク質を摂取(脳への燃料供給)

  • 精製糖・カフェインの摂りすぎを避ける

  • オメガ3脂肪酸・ビタミンB群・マグネシウム補給

     

睡眠:脳をリセットする

  • 寝る1時間前はブルーライト遮断

  • 深部体温を下げる入浴法(就寝90分前)

  • 朝日を浴びてサーカディアンリズムを整える

     

刺激:入力バランスを取り戻す

  • 歩く・立つ・体を動かす「感覚入力」を増やす

  • 視覚ではなく、足裏・体幹から情報を得る習慣

  • 一方向作業(車・PC)には反対動作のリカバリーを取り入れる

     

これらの小さな積み重ねが、神経系の左右バランスを回復させ、
「再発しない身体」を作っていきます。

 

 

 

オーバーユーズは“結果”であって“原因”ではない


足底腱膜炎を単なる「使いすぎによる炎症」と捉えるのは、

木を見て森を見ない考え方です。

炎症が起きる前に、

その土台となる神経系の制御不均衡が存在しています。

生活習慣の乱れが神経を疲弊させ、

小脳・前庭・体性感覚の統合を狂わせ、

筋トーンのバランスが崩れる。

そして、その結果として炎症が起こります。


つまり、足底腱膜炎とは「神経系の生活習慣病」でもあるのです。

 

 

 

神経から“整える”という新しい予防法


治療も予防も、方向性は同じです。

局所ではなく全身の神経系の働きを整えること。

そのために大切なのは「負荷を減らす」よりも、

「入力を整える」「神経を育てる」こと。

鍼灸はその最も直接的な方法のひとつです。

微細な刺激で脳幹・小脳・自律神経を動かし、

身体の地図を更新していきます。

その過程で血流も代謝も整い、結果として炎症も鎮まる。

炎症は敵ではなく、バランス回復の信号といえます。

 

 

 

おわりに  “痛み”は身体の語りかけ


足底腱膜炎の痛みは、

単に足の裏の問題ではなく、

あなたの神経系が「もう少しバランスを取り戻して」と

語りかけているサインかもしれません。


栄養、睡眠、刺激


そのどれかひとつでも偏ると、神経は静かに乱れはじめます。

もし今、あなたの身体が「痛み」という形でメッセージを出しているなら、

まずは“炎症”ではなく、“神経のバランス”を整える視点を持ってください。

それが、再発を防ぎ、根本的に治すための第一歩になるのです。


 


参考文献・出典

  1. Bove GM, et al. Neurogenic inflammation and pain. Mechanisms and clinical implications. Pain. 2022.

  2. Schleip R, et al. Fascia and the autonomic nervous system. Journal of Bodywork & Movement Therapies, 2018.

  3. Mense S, et al. Muscle pain: mechanisms and clinical significance. Deutsches Ärzteblatt International, 2010.

  4. Nijs J, et al. From acute musculoskeletal pain to chronic pain: the role of central nervous system dysfunction. Pain Physician, 2014.

  5. Tracey KJ. The inflammatory reflex. Nature, 2002.

  6. Carrick FR. Functional Neurology and Rehabilitation. Carrick Institute Monograph, 2019.

     

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