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痛みの根は“体”だけでなく“脳”にもある。呼吸・鍼・神経アプローチで取り戻した、心身の安定。

こんにちは。

大阪府枚方市「はる鍼灸整骨院」院長の島井です。


今日は、座るだけで下半身がジンジン痛む“陰部神経痛”に悩まされた50代女性の回復までの道のりをご紹介します。

この症状はデリケートな部位に起こるため、誰にも相談できずに我慢している方が非常に多いのが現状です。

しかし、神経と脳の働きを正しく理解し、整えていくことで確実に回復できることを、今回のケースは教えてくれました。

 

「座るだけで痛い」 日常の中で始まった違和感


その女性は、大阪市内で事務職として働く会社員。

仕事柄、一日の大半をパソコンの前で過ごす生活を送っていました。

ある日を境に、「座っていると右の肛門のあたりがジンジンする」ことに気づきます。

最初は「痔かな?」と思ったそうですが、日が経つにつれて陰部にまで広がるしびれと痛みを感じるようになりました。

立っているときや歩いているときは痛みは出ません。

ところが、椅子に座ると数分でジンジンと灼けるような痛み。

それが日に日に強まり、「座るのが怖い」と感じるほどに。

 

 

 

病院での検査は「異常なし」 でも痛みは消えない


不安を抱えながら婦人科と整形外科を受診。

MRI・CT・血液検査、どれも異常はありません。

医師からは「陰部神経痛の疑いがありますね」と言われ、

血流を良くする薬とビタミン剤を処方されました。

ところが2か月経っても改善せず、座ることができない生活が続きました。

食事も立ったまま。通勤電車では端の席を避け、なるべく立ち続けて過ごしていたといいます。

「このまま治らなかったらどうしよう」

「誰にも話せない場所の痛みだから、余計につらい」

そんな思いを抱えて、インターネットで当院を見つけられました。

 

 

当院での評価:神経の“地図”を描く


初診ではまず、痛みの位置と性質を丁寧に確認します。

ピンによる痛覚検査を行うと、右臀部で痛覚過敏が確認されました。

これは「神経の入力が過剰に反応している」サインです。

さらに神経学的検査を進めると

  • サッケード(眼球の素早い動き)でオーバーシュートがあり、
    → 目標位置を通り過ぎてしまう小脳の制御異常が見られました。

  • 輻輳反射(両眼を内側に寄せる反射)では右目が寄り切らず、
    → 視覚情報を正確に統合できていない状態。

  • ロンベルグテスト・継足歩行では動揺が目立ち、
    → 姿勢制御に関与する小脳・前庭系の左右差を示唆。

     

これらの結果から、単に末梢の神経圧迫ではなく、
中枢神経系(脳・小脳・脳幹)の機能バランスの崩れが痛みの根底にあると考えられました。

 

 

 

神経の“誤警報”を解除するBASE療法


初回はまず、BASE療法(Brain Alarm System Entrainment)からスタートしました。

これは「脳内の警告システム」をリセットするアプローチです。

陰部神経痛のような慢性疼痛では、身体が危険を察知していないのに、

脳が「まだ危険だ」と誤認して痛み信号を出し続けていることがあります。

呼吸を深く整えることで、迷走神経(副交感神経)を介して脳に“安全信号”を送り、

交感神経の緊張を解除していきます。

セッション中、彼女の表情は徐々に緩み、

「呼吸が深くできるようになってきた」と穏やかに話されました。

 

 

 

鍼灸治療:末梢から中枢へ 痛覚抑制ネットワークを再起動


次に行ったのは、鍼灸による神経調整です。

手足への刺激

まずは手足の遠隔ポイント(例:合谷・太衝など)へ刺鍼。

これにより、脳幹や大脳皮質から発せられる下行性痛覚抑制系を賦活します。

これは、身体に本来備わっている「痛みを和らげる神経回路」です。


 

顔面部への刺激

続いて、顔面(三叉神経領域)への軽刺激。

この刺激は中脳のPAG(中脳水道周囲灰白質)を介して、

全身の痛み抑制システムを活性化します。

痛みは「感じる場所」だけを治療しても取れない。

痛みを“感じている脳”の働きそのものを変える必要があるのです。

 

 

 

陰部神経刺鍼点へのアプローチ


局所への刺激は非常に慎重に行います。

陰部神経は仙骨の下、坐骨棘近くを走行し、肛門・会陰・外陰部へ枝を分けています。

このルートに沿った安全な刺鍼点から、筋緊張と局所循環を改善し、

神経の滑走性を取り戻していきます。

深部にこもっていた“ジンジン感”が次第にやわらぎ、

彼女は「座っていられる時間が少しずつ長くなってきた」と笑顔で話してくれました。

 

 

 

機能神経学による「脳—骨盤底」の再教育


症状が落ち着いてきた段階で、

眼球運動や体幹バランス訓練などの機能神経学的リハビリを導入しました。

  • サッケードトレーニング(目のジャンプ運動)

  • 輻輳運動トレーニング(近くを見る練習)

  • 軽い片脚立ち、継足歩行
     

これらを通じて、小脳・脳幹・前庭系を再協調。

脳が「身体の中心軸」を正確に認識できるようになると、

骨盤底筋群の過緊張も自然と緩み、痛みの再発が防がれていきます。

 

 

 

回復への道 18回の施術記録

  • 1〜4回目:呼吸が深くなり、座位時の痛みが半減。

  • 5〜10回目:座ってのデスクワークが可能に。

  • 11〜15回目:長時間の会議でも痛みが出なくなる。

  • 16〜18回目:完全寛解、現在は月1回のメンテナンス。
     

今では通勤も趣味の読書も、痛みを気にせず楽しめるようになりました。

「以前は“痛みを避ける生活”だったけど、今は“自分から動ける体”に戻った気がします」との言葉が印象的でした。

 

 

 

専門解説:陰部神経痛のメカニズム


陰部神経痛は、

骨盤内での神経の圧迫・牽引・炎症によって発症しますが、

近年はそれに加えて中枢感作(Central Sensitization)が注目されています。

 

中枢感作とは?

末梢の刺激が長期間続くと、脊髄や脳幹で痛みを感じる神経細胞の閾値が下がり、

「本来なら痛くない刺激まで痛く感じる」状態です。

 

特に陰部神経は、膀胱・直腸・性器など多くの感覚情報を運ぶため、
自律神経との関係も深いのが特徴です。

また、長時間の座位による骨盤底筋群の過緊張は、

神経周囲の血流を低下させ、酸素供給不足を引き起こします。

この低酸素状態は、神経終末の興奮を持続させ、痛みを強めます。

 

 

 

PAGと三叉神経の役割

顔面部への鍼刺激が全身の痛み抑制に作用する理由は、

PAG(中脳水道周囲灰白質)にあります。

三叉神経からの感覚入力はPAGに投射し、

そこからセロトニン・ノルアドレナリン系を介して脊髄へ下行。

これが“痛みを和らげる神経ブレーキ”として働きます。

つまり、顔への軽い刺激が脳幹の鎮痛システムを活性化し、

骨盤内の痛みにも波及して緩和をもたらすのです。

 

 

 

感情と痛み 脳が出す“誤警報”

慢性的な痛みでは、「不安」「恐怖」「羞恥」などの感情が

痛みの強度を増幅させます。

脳の扁桃体は感情の中心であり、

ここが興奮すると痛みの信号を強調してしまいます。

そのため、治療中は常に安心感をもってもらえるよう、

「痛みは体の警報装置が少し過敏になっているだけ」という説明を繰り返しました。

理解と安心が得られると、扁桃体の興奮が静まり、

痛みの“ノイズ”が少しずつ消えていくのです。

 

 

 

再発予防とセルフケア


彼女には、次のセルフケアを継続してもらっています。

  1. 深い呼吸(1日3分)
    → 横隔膜をしっかり使い、副交感神経を活性化。

  2. 骨盤の軽いストレッチ
    → 骨盤底筋群の過緊張を防ぐ。

  3. アイマストレーニング
    → 近く・遠くを交互に見ることで脳幹・小脳のバランスを保つ。

     

神経の働きは“使い方”で変わります。

意識的な呼吸や動きが、脳と身体を穏やかに保つ鍵となります。

 

 

 

院長メッセージ


「痛みを恐れず、自分の体を信じて」

陰部神経痛は、

“痛みの場所が話しづらい”という理由で放置されやすい症状です。

けれども、身体の不調には必ず理由があります。

それは構造の問題だけでなく、脳と神経の誤作動が背景にあることがほとんどです。

あなたの体は、壊れていません。

ただ「守りすぎている」だけ。

私たちは、そのブレーキを一緒に緩め、

もう一度“安心して座れる日常”を取り戻すお手伝いをしています。

 

 


参考文献・出典

  1. Robert, R. et al. Pudendal neuralgia: a clinical and neurophysiologic study of 53 observations. Pain, 1998.

  2. Beco, J. Pudendal neuralgia and pudendal nerve entrapment: diagnosis and management. Current Pain and Headache Reports, 2015.

  3. Tracey, I. The neuroanatomy of pain and its modulation by functional neurology. Nature Reviews Neuroscience, 2017.

  4. Nociceptive modulation via trigeminal–PAG pathways, Frontiers in Pain Research, 2023.

     

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