30代ママの回復ストーリー

こんにちは。
大阪府枚方市の「はる鍼灸整骨院」院長、島井浩次です。
今回ご紹介するのは、3人のお子さんを育てながらパート勤務をされている30代の女性患者さんのお話です。
一見「治ったはずの捻挫」が、なぜか違和感として長引いてしまったケース。
その背景には「感覚のズレ」が隠れていました。
スーパーの駐車場での転倒
ある日、買い物を終えてスーパーの駐車場を歩いていたときのこと。
ちょっとした段差に躓いて右足を捻挫。みるみる腫れ、内出血も広がりました。
翌日整形外科を受診し、レントゲン検査の結果「骨には異常なし、捻挫」と診断。
装具で3週間固定し、腫れや内出血もきれいに消えました。
「治ったはずなのに、歩き方がおかしい」
装具を外したその日、歩いて帰る途中で違和感に気づきました。
「足首はまっすぐなはずなのに、ずっと内返しで歩いている感覚がするんです」
整形外科に再度相談しましたが、「捻挫は治っているので大丈夫、しばらく様子を見ましょう」とのこと。
しかし、1週間経っても改善せず、インターネットで当院を見つけて来院されました。
検査で見えてきた「感覚の麻酔状態」
当院で検査をすると、足首の動揺性や関節の異常はなく、見た目にはしっかり治っていました。
ところが足底の感覚を調べていくと、右足底の外側(小指側)に大きな異常が見つかりました。
- 痛覚(痛みを感じる力)が低下
- 振動覚や触圧覚も左に比べ低下
- ピンで刺激しても「触った感覚」はあるのに「痛み」は感じない
まるで「歯医者さんの麻酔が効いているとき」と同じ状態だったのです。
さらに、足趾の識別能力も落ちており、中指と薬指の区別がつきませんでした。
神経学的にみると…
捻挫後には靭帯や関節の損傷だけでなく、「足底の感覚入力の乱れ」が起こることがあります。
感覚が正しく脳に届かないと、脳は足の位置を誤って認識し、実際にはまっすぐなのに「内返しで歩いている」と感じてしまうのです。
この方はもともと首こりや頭痛もあり、感覚処理を担う脳幹や大脳皮質の機能に負担がかかっていたことも背景にありました。
鍼灸と機能神経学でのアプローチ
施術では以下を行いました。
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足関節周囲へのトリガーポイント鍼治療
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足底感覚を回復させる機能神経学的トレーニング
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足趾の識別訓練
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振動や軽い刺激を用いた感覚入力
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首こり・頭痛へのアプローチで全体の神経バランスを整える
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改善の経過
- 1〜2回目:内返しの感覚は残るが、歩行時の違和感が少し軽くなる
- 3回目:足趾の識別が改善し、感覚の「麻酔状態」が薄れてくる
- 4回目:頭痛の頻度も減り、足の感覚がより明確になる
- 5回目:内返し感覚が消失し、自然に歩けるようになる
まとめ
この症例は「捻挫自体は治っているのに、感覚がリセットされていなかった」ケースです。
外傷後に「形は治っているのに違和感が残る」とき、その背景には神経の感覚処理の問題が潜んでいることがあります。
院長からのメッセージ
「捻挫は治っているはずなのに、なんだかおかしい」
そんな違和感を抱えたまま過ごしていませんか?
身体の感覚と脳の認識にズレがあると、見た目には異常がなくても不調が続きます。
当院では鍼灸と機能神経学を組み合わせて、感覚と運動のバランスを整える施術を行っています。
同じようなお悩みのある方は、ぜひ一度ご相談ください。
出典・参考文献
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Hertel J. Sensorimotor deficits with ankle sprains and chronic ankle instability. Clin Sports Med. 2008;27(3):353-370.
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Needle AR, Charles B, Farquhar WB, Lentz LR, Rozzi SL. Reliability and validity of ankle proprioception tests. J Athl Train. 2013;48(5):575-583.
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田中喜代次ほか. 足関節捻挫後の感覚異常に関する研究. 日本臨床スポーツ医学会誌.