※この記事は、当院で実際に行った問診・カウンセリング内容をもとに構成しています。
プライバシー保護のため一部脚色しておりますが、症状や経過は実際の臨床例に基づいています。

はじめに
こんにちは。大阪府枚方市にある「はる鍼灸整骨院」の院長 島井 浩次です。
「座ると、下腹部や会陰部がジンジン痛む」
病院では「異常なし」と言われても、その痛みは毎日あなたを苦しめていませんか?
今回ご紹介するのは、40代デスクワーク女性の陰部神経痛改善ストーリーです。
最初は5分と座っていられなかった方が、10回の施術で旅行や長距離移動も可能になった経過を、専門的な解説を交えてお伝えします。
痛みを我慢している方にこそ読んでほしい、実際の臨床経験に基づく記録です。
1. はじまりは“違和感”だった
「なんだか、座っていると下のほうがジンジンする…」
最初は、長時間座って仕事をした日の夕方だけに感じる、軽い違和感でした。
40代の私は、総務部でパソコンと向き合う毎日。朝から夕方まで、ほぼ座りっぱなし。
背中のこりや腰の重だるさは“仕事の勲章”みたいなものだと、自分に言い聞かせてきました。
でも、その日は少し違いました。
椅子に腰掛けると、じわっと下腹部から会陰部にかけて、熱を帯びるような感覚が走る。
立ち上がると少し楽になるけれど、また座れば同じ場所がじんじんと疼く。
そんな繰り返しでした。
2. 徐々に生活を蝕む痛み
最初は「そのうち治るだろう」と軽く考えていました。
でも一週間経っても、違和感は引かないどころか、座っていられる時間が短くなってきました。
通勤電車の中、駅から職場までのバス、会議室での長時間の打ち合わせ
どれも「座らないといけない時間」です。
その度に「早く立ちたい」という思いが頭の中を占領して、話の内容が入ってこない。
仕事の集中力は落ち、家に帰ればぐったり。
夕飯も作る気力がなく、惣菜で済ませる日が増えました。
3. 病院受診と「異常なし」の現実
さすがにおかしいと思い、まずは婦人科を受診。
内診やエコー検査では「特に異常は見られません」。
次に泌尿器科でも診てもらいましたが、やはり「異常なし」。
鎮痛剤を処方されましたが、飲んでも座れば痛みが戻ってくる。
「このまま一生、この痛みと付き合うのかな…」
夜、ベッドで天井を見つめながら、そんな不安が頭をよぎります。
病院を2つ回っても原因が分からないことが、痛み以上に心を重くしていました。
4. 当院との出会い
痛みが出始めてから1か月。
ネット検索で「座ると痛い 会陰部」「陰部神経痛 女性」
を調べていたとき、偶然当院のホームページを見つけました。
“陰部神経痛と鍼治療の症例”というページに、
まるで自分のことのような症状が書かれていたのです。
「病院で異常なしと言われたのに、痛みが続く方へ」
この一文に心を掴まれ、気づけば予約フォームに名前を入力していました。
5. 初回カウンセリング
初診の日、まずは詳しい問診から始まりました。
「いつから痛みが出たのか」「どの動作で痛みが増すのか」「痛みの質は?」など、
一つひとつ丁寧に聞かれます。
椅子に座った状態と立った状態での痛みの変化も確認。
さらに骨盤周囲や腰、太もも裏などを軽く押されると、
会陰部にまで“響く”感覚が走りました。
【専門解説】陰部神経とその走行
陰部神経(pudendal nerve)は、仙骨の前側から骨盤底を走り、肛門・会陰・外陰部の感覚や一部の筋肉を支配します。
この神経は骨盤の奥深くを通るため、骨盤底筋や靭帯の過緊張、坐骨棘周囲の圧迫などで障害されやすいのです。
特に長時間の座位は、骨盤底部に持続的な圧迫を与え、血流を悪化させるため、神経が過敏になりやすくなります。
6. 検査で見えた原因
検査では以下の所見がありました。
- 骨盤底筋の強い緊張
- 仙腸関節付近の圧痛と関連痛
- 下肢の軽度冷え
- 自律神経検査で交感神経優位(手足の皮膚温低下)
押圧で会陰部に響くポイントがいくつも見つかり、トリガーポイント(筋肉の過敏な硬結)が陰部神経の通り道に存在していることがわかりました。
【専門解説】トリガーポイントと関連痛
トリガーポイントは、筋肉の一部が持続的に収縮し血流が悪化している状態で、押すと遠隔部位に痛みやしびれが飛ぶ「関連痛」を起こします。
陰部神経痛の場合、骨盤底筋群・内閉鎖筋・大殿筋深部などのトリガーポイントが、神経に機械的刺激を与えたり、炎症性物質を放出したりして痛みを悪化させます。
7. 施術プラン
院長から説明された施術方針はこうでした。
- トリガーポイント鍼治療で骨盤底筋や周辺筋の過緊張を緩める
- 機能神経学的アプローチで、自律神経のバランスを整える
- 自宅でできる軽いストレッチと骨盤底筋リラックス法を指導
「痛みの根本は神経そのものの損傷ではなく、周囲の筋肉と神経の過敏状態。」
「時間はかかりますが、改善は十分可能です。」
この言葉で、長く曇っていた心に少し光が差しました。
8. 施術経過と変化
施術経過表
回数 | 症状の変化 | 生活への影響 |
---|---|---|
初回 | 座ると5分で痛み。骨盤底筋の緊張が強く、押圧で会陰部に響く。 | 長時間の会議が困難。 |
3回目 | 座れる時間が15分に延びる。痛みの質が「ジンジン」から「重だるさ」に変化。 | 通勤電車の着席が少し可能に。 |
5回目 | 座位30分まで耐えられる。痛みの波が減少。 | 会議参加がスムーズに。 |
7回目 | 痛みは軽度に。日によっては無症状で過ごせる。 | 昼休みにカフェで過ごせるようになる。 |
10回目 | 痛みほぼ消失。長時間座位も問題なし。 | 出張や長距離移動も可能に。 |
施術1〜3回目
初回は骨盤底筋と内閉鎖筋の深部にトリガーポイント鍼を行い、刺入直後から「じわっと広がる響き」が再現されました。
同時に仙腸関節付近や殿部深部にもアプローチ。
施術後は「少し軽くなった」との感想。
3回目までに、座れる時間が5分から15分に延び、痛みの質も変化しました。
これまで「熱を帯びるようなジンジン感」だったのが、「重い感じ」に変わったのです。
【専門解説】自律神経と痛みの関係
痛みは単に患部の問題だけではなく、自律神経のバランスとも密接に関係しています。
交感神経が優位になると、血管が収縮し筋肉の血流が低下。
この状態が続くと、神経が栄養不足になり、痛みを感じやすくなります。
鍼刺激はこの交感神経優位を和らげ、副交感神経を高めることで血流改善と神経の鎮静化を促します。
施術4〜6回目
骨盤底筋の緊張は明らかに減少。
押圧時の関連痛も弱まりました。
5回目の施術後には、会議や昼食後のデスクワークも30分以上続けられるようになり、「痛みが頭から離れる時間」が増えました。
施術7〜9回目
「今日は一日痛みを感じなかった」という日が出てきました。
再発予防のため、骨盤底筋を過剰に使わない座り方や、就寝前のリラックス呼吸法も指導。
夜の睡眠の質も改善し、翌日の仕事の集中力が高まったと話されました。
施術10回目
最終的には、長時間の座位や長距離移動でも痛みが出なくなりました。
日常生活にほぼ支障がなくなり、本人も「これならまた旅行にも行ける」
と笑顔を見せてくれました。
9. 回復後の生活
痛みが消えたことで、仕事もプライベートも大きく変わりました。
「また痛くなるのでは…」という不安は残っていましたが、指導したセルフケアを習慣化し、再発は防げています。
仕事では会議や研修など長時間の着席もこなせるようになり、以前より集中力が続くように。
プライベートでは、趣味の読書やカフェ巡りも再開。座ること自体が苦痛ではなくなった今、生活の自由度は格段に上がりました。
10. 再発予防のセルフケア
回復後も、以下のセルフケアを継続してもらっています。
-
骨盤底筋のリラックス呼吸
仰向けで膝を立て、鼻からゆっくり吸い、口から長く吐く。骨盤底がふわっと緩む感覚を意識。 -
1時間ごとの立ち上がり
デスクワーク中も1時間ごとに立ち、軽く歩くことで骨盤周囲の血流を保つ。 -
腰回り・股関節のストレッチ
特に内もも(内転筋)やお尻(大殿筋)の軽いストレッチを日課に。
【専門解説】なぜ再発予防が必要か
陰部神経痛は、神経自体が損傷している場合もありますが、多くは筋肉や靭帯の慢性的な緊張が原因です。
症状が改善しても、その原因となった生活習慣や姿勢が続けば、再び神経への圧迫や過敏化が起こります。
予防は「痛みを出さない体の使い方」を身につけることがポイントです。
11. 同じ症状で悩む方へ
「座ると痛い」「病院では異常なしと言われた。」
そんな状況は、痛みそのものだけでなく、理解されないつらさを伴います。
私たちは、その痛みを“あなたのせい”にすることはありません。
痛みには必ず原因があり、それが筋肉や神経の過敏化であれば、改善の可能性は十分あります。
陰部神経痛は、決して珍しい症状ではありません。
そして、諦めなくてもいい症状です。
12. まずはご相談ください
当院では、陰部神経痛の改善に特化した施術を行っています。
骨盤底筋や周辺筋へのトリガーポイント鍼治療と、自律神経のバランスを整える機能神経学アプローチを組み合わせ、症状の根本改善を目指します。
「私も同じかも…」と思ったら、まずは一度ご相談ください。
長く続く痛みのない日常を、取り戻しましょう。
参考・出典
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Robert, R. et al. Pudendal neuralgia: pathophysiology and therapeutic management. Pain Physician. 2015;18(5):E775-E789.
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Labat JJ, Riant T, Robert R, et al. Diagnostic criteria for pudendal neuralgia by pudendal nerve entrapment (Nantes criteria). Neurourol Urodyn. 2008;27(4):306-310.
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Travell, J.G., Simons, D.G. Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual. Williams & Wilkins, 1999.
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Cagnie B, et al. Evidence for the use of ischemic compression and dry needling in the management of myofascial trigger points. J Bodyw Mov Ther. 2015;19(4):747-752.
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MacDonald, D., et al. Acupuncture and neuroplasticity: insights into chronic pain treatment. Med Acupunct. 2020;32(5):317-324.