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はじめに:なぜ雨や台風が近づくと体調が崩れるのか?

「台風が来ると頭が痛い」

「雨の日はめまいが強い」

こんな経験はありませんか?

このような“気象病”を訴える方は近年増加していると言われています。


多くの方が「低気圧になると空気が薄くなるから体調が悪くなる」と思いがちですが、実際には地上での酸素濃度は常に約21%でほぼ一定です。

それでも不調が起こる理由として、気圧そのものよりも「気圧変化に対する神経系の適応力」が低下している可能性が指摘されています。

今回は、酸素分圧の変化が神経や自律神経にどう影響するのか、そして前庭呼吸反射がどのように関わっているのかを詳しく解説します。

 

 

 

酸素分圧の低下と体への影響
 

酸素分圧(PO₂)とは?

酸素分圧は、空気中の酸素が体にどれだけ入り込みやすいかを示す「押す力」のことです。

  • 標準大気圧(1,013 hPa):PO₂ ≈ 約213 hPa

  • 台風など強い低気圧(980 hPa):PO₂ ≈ 約206 hPa
     

わずか3%ほどの低下に過ぎず、健康な人にとって大きな問題になることは少ないと考えられています。

しかし、ミトコンドリア機能が低下している人や慢性疲労がある人では、酸素利用効率が低いため、このわずかな低下でも神経活動に影響する可能性があります。

 

 

 

ATP産生低下と神経の静止膜電位(RMP)変動
 

 1. 静止膜電位(RMP)とは?

神経細胞の内外には電気的な電位差があり、通常は細胞内が-70mVほどで安定しています。

これを静止膜電位(Resting Membrane Potential:RMP)と呼びます。

この電位は、主に
Na⁺/K⁺-ATPaseポンプ
がATPを消費してイオン勾配を維持することで保たれています。


 

2. ATP不足で何が起きるのか?

  • 低気圧で酸素分圧が低下 → 酸化的リン酸化効率が低下 → ATP産生が減る可能性があります。

  • ATPが不足するとNa⁺/K⁺ポンプが十分に働かず、細胞内のK⁺が外に漏れやすくなり、RMPが脱分極方向(-60mV付近など)へシフトします。

     

3. 脱分極と神経過敏化

脱分極が進むと、神経は刺激に対して反応しやすい「過敏な状態」になります。

そのため、通常なら問題にならないわずかな気圧変化や内耳刺激にも過剰に反応し、頭痛・めまい・倦怠感などの不調が出やすくなると考えられます。

 

 

 

大脳皮質から自律神経への影響

大脳皮質(特に前頭前野・島皮質)は、脳幹や自律神経中枢を抑制する重要な役割を担っています。

  • ATP産生低下 → 皮質機能低下 → 脳幹網様体への抑制低下

  • 脳幹の交感神経中枢(IML)への抑制が弱まると、交感神経が優位になりやすい状態になります。
     

結果として、末梢や内耳の血流が低下し、めまいや頭痛などの症状が増悪すると考えられます。

 

 

 

「低気圧接近前」に不調が強い理由
 

気圧変化の方向性と予測性

低気圧接近時は、気圧が下降方向に変化し続けます。この「変化し続ける状態」は脳にとって予測が難しく、前庭小脳や視床下部が持続的に調整を強いられるため、中枢疲労が蓄積する可能性があります。

一方、低気圧通過後の気圧上昇は安定化方向への変化であるため、比較的適応しやすいと考えられます。


 

内耳圧変化による前庭系負荷

外界気圧が低下すると、内耳の内リンパ液圧と外界との圧バランスが変化し、内耳が「頭部の加速度変化」と誤認する可能性があります。

これが前庭系の過敏化→自律神経の乱れにつながると考えられます。

 

 

 

前庭呼吸反射の詳細な生理学的メカニズム
 

1. 前庭呼吸反射とは?

前庭呼吸反射は、体位変化や重力負荷に応じて呼吸リズムを自動調整する反射です。

経路:
内耳(耳石器) → 前庭神経核(特に外側・上前庭神経核) → 延髄呼吸中枢(Pre-Bötzinger complex、孤束核) → 横隔神経・呼吸筋


 

2. 低気圧時の問題

  • 外界気圧の変化で内耳圧がわずかに変動 → 前庭が「姿勢変化」と誤認する可能性

  • 誤認が続くと、呼吸中枢を過剰刺激し、呼吸数が増加=過換気が誘発されやすくなると考えられます。

     

3. 前庭と自律神経の連携

前庭神経核は網様体や青斑核ともつながり、交感神経活動を調整しています。

そのため、前庭が過敏化すると呼吸リズムだけでなく交感神経活動も過剰に高まりやすいのです。

 

 

 

過換気と低CO₂血症が引き起こす悪循環
 

1. 呼吸性アルカローシスの発生

過換気によりCO₂が過剰に排出されると、血液がアルカリ性に傾き、呼吸性アルカローシスになります。

 

2. 脳血流低下と神経機能への影響

  • CO₂低下 → 脳血管収縮 → 脳血流低下(特に前頭前野などの高次皮質で顕著)

  • 脳血流低下 → ATP産生低下 → RMP脱分極 → 神経過敏化

     

3. 自律神経への影響

皮質機能が低下すると、網様体への抑制がさらに弱まり、交感神経優位化が進むと考えられます。
これにより末梢や内耳への血流が減少し、めまいや頭痛、倦怠感などの症状が強まる可能性があります。




 

前庭呼吸反射が過敏な人の特徴と簡易評価
 

 問診でみられる特徴

  • 乗り物酔いしやすい

  • 気圧変化で息苦しさを感じやすい

  • 横になる・頭を下げると呼吸が乱れやすい

     

簡易評価法

  1. 頭位変化テスト:頭を上下左右に動かすと呼吸が速くなる

  2. 視線追従テスト:ペン追従中に呼吸が浅くなる

  3. 片足立ちテスト:バランス負荷時に呼吸が乱れる



     

 

対策として考えられること



呼吸法

  • 吸気4秒:呼気8秒(1:2呼吸)を1日3回
    CO₂レベルが安定し、迷走神経活性が高まる可能性があります。


     

前庭安定トレーニング

  • 遠近交互注視、軽いバランス運動
    前庭系の過敏性低下に役立つと考えられます。


     

栄養サポート

  • Mg²⁺、K⁺、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸
    ATP産生や神経の静止膜電位安定化に役立つ可能性があります。




     

まとめ

低気圧時の不調は、単に「気圧が低い=酸素が薄い」という単純な理由では説明できません。
 

低気圧 → 内耳・前庭系過敏化 → 過換気 → 低CO₂血症

 ↓

脳血流低下・ATP産生低下 → 大脳皮質機能低下

 ↓

自律神経過剰反応(交感神経優位化)

 ↓

末梢血流低下 → 頭痛・めまい・倦怠感

 

 

この一連の流れが、気象病の背景にある可能性があります。

呼吸法や前庭系トレーニング、栄養サポートなどで神経の適応力を高めることが、不調軽減に役立つかもしれません。

 


参考文献

  1. Mukamal KJ, Wellenius GA. Weather and health: the effect of barometric pressure on headaches. Neurology. 2009.

  2. Magistretti PJ, Allaman I. A cellular perspective on brain energy metabolism and functional imaging. Neuron. 2015.

  3. Nicholls DG. Mitochondrial dysfunction and ATP depletion in neurodegenerative diseases. Biochim Biophys Acta. 2009.

  4. Somjen GG. Ionic basis of neural activity and excitability changes in hypoxia. Adv Exp Med Biol. 2004.

  5. Yates BJ, et al. Vestibulo-respiratory reflexes: basic mechanisms and clinical implications. Curr Opin Neurol. 1996.

  6. Cotter LA, et al. Vestibular system modulation of sympathetic outflow during movement and posture changes. J Appl Physiol. 2004.

  7. Kety SS, Schmidt CF. The effects of altered arterial tensions of carbon dioxide and oxygen on cerebral blood flow and cerebral oxygen consumption. J Clin Invest. 1948.

  8. Holstein GR, et al. Vestibular modulation of autonomic function in health and disease. Semin Neurol. 2010.


 

 

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