
はじめまして
大阪府枚方市で、鍼灸と機能神経学を組み合わせた施術を行っている「はる鍼灸整骨院」の院長 島井 浩次です。
「腰が重い」「足が突っ張る」「足裏が変な感じがする」…そんなお悩みは、長時間のデスクワークをしている方に多く見られます。
しかし、その痛みや違和感が、家族との大切な時間さえ奪ってしまうこともあります。
今回は、2人の小さなお子さんを育てる40代会社員のお父さんが、腰痛・足のシビレ・めまいを乗り越え、家族との笑顔を取り戻すまでのストーリーをご紹介します。
1. 「足裏にこんにゃくを挟んで歩いているみたいで…」
「座っているだけなのに、腰がずっと重たくて…。右の太もも裏からスネにかけて突っ張る感じもあって、最近は足裏が変なんです。まるでこんにゃくを踏んでいるみたいで…。」
初診の日、彼は少し申し訳なさそうに笑いました。
40代、会社員。2人の子どもを育てるお父さんです。
「夜中、下の子が泣くと、妻が寝不足にならないように…って自分が抱っこしてあやすんですけど、最近はもう腰が痛くて…。」
「でも泣いてる子どもに“パパ、今日は抱っこできない”なんて言えないじゃないですか。」
そして、こう続けました。
「子どもが“パパおんぶして!”って笑顔で言ってくるのに、今はそれすらすぐにしてあげられないんです。」
その言葉には、痛みそのものよりも父親としてのもどかしさがにじんでいました。
2. 痛みが家族との時間を変えてしまった
「この前なんか、上の子が“パパ、ブロック一緒に作ろうよ!”って言ってくれて…。」
「でも床に座り込むのがつらくて、途中で立ち上がっちゃったんです。」
「そたら“パパ、もういいの?”って少し寂しそうに言われちゃって…。」
「あれはちょっと堪えましたね。」
家族の前では弱音を吐かない彼ですが、このときは声を少し落としました。
そして、妻との会話も変わりました。
「“夜泣きのときは私が行くから寝てていいよ”って妻が言ってくれるんです。」
「でも、妻に任せきりにするのも申し訳なくて…。」
「だけど体がついていかない日があって、そのたびに“ごめん”って心の中で思うんです。」
ただの腰痛、ただの疲れ…そう片付けられない生活への影響が、そこにはありました。
3. 病院での検査——“異常なし”の大切さ
彼は当院に来る前に整形外科や神経内科できちんと検査を受けていました。
骨や椎間板、脳や神経に重大な疾患は見つかりませんでしたが、これは非常に重要なステップです。
「異常がなかった=行く意味がなかった」わけではありません。
重大な病気が否定されたからこそ、安心して鍼灸や機能神経学的なアプローチを進められるのです。
「病院では“特に異常はありません”って言われたので、少しホッとしました。」
「でも、じゃあこの痛みや足裏の変な感じは何なんだろうって…。」
「それが逆に不安でした。」
彼はそう話していました。
4. 当院で見えた“脳と筋肉のつながりの弱さ”
神経学的検査で以下が確認できました。
▶筋肉の圧痛
- 右の梨状筋・中殿筋・腰方形筋・大腿二頭筋に強い圧痛
- 頚部では斜角筋群・胸鎖乳突筋・僧帽筋・頭板状筋も過緊張
▶神経機能の評価
- 右サッケード時にオーバーシュート → 小脳機能低下の可能性
- ロンベルグテスト・偏脚立位・オルタネイト・鼻指鼻検査すべて右が低下
- 右足底の振動覚低下
これは、筋肉だけの問題ではなく、小脳と感覚統合の乱れが痛みと違和感を引き起こしていると考えられました。
5. トリガーポイント鍼治療と機能神経学的アプローチ
①トリガーポイント鍼治療
- 梨状筋や大腿二頭筋など坐骨神経に関わるトリガーポイントを緩め、同時に頚部・肩周囲も施術。
- これにより、小脳への感覚入力がスムーズになる基盤作りをしました。
②機能神経学的アプローチ
- 視線追従トレーニングで小脳機能を活性化
- 足底感覚トレーニングで位置覚を再教育
- バランス課題(偏脚立位・視覚入力課題)を段階的に導入
6. 12回の施術経過——家族との会話に変化が
▶初回〜3回目
「足裏のこんにゃく感が少し減った気がします。」
妻にも「なんか少し歩き方が軽くなったね」と言われたそうです。
▶4〜6回目
腰の重だるさが軽減し、長時間座っていても痛みが増幅しにくくなりました。
上の子が「パパ、今日はずっと座ってても“イタタ”って言わなかったね!」
と嬉しそうに言ったそうです。
▶7〜9回目
「朝、上の子と一緒にブロック遊びができるようになりました!」
下の子が「パパ、抱っこ!」と駆け寄ってきたときも、ためらわずに抱き上げられるようになり、家族で大喜びしたとのこと。
「パパ、治ったの?」と子どもに聞かれ、「うん、パパ頑張って治してるんだよ」と笑い返したとき、胸が熱くなったそうです。
▶10〜12回目
「足裏にこんにゃくを挟んだ感じはもうほぼないです。」
めまいもほとんどなくなり、肩こりも軽減。
「夜泣き対応で起きるのは同じですが、前より疲れ方が違う」
と笑顔で話されました。
7. なぜ改善したのか——専門的解説
長時間のデスクワークは筋肉疲労だけでなく、小脳と末梢感覚の連携不良を引き起こします。
小脳の機能低下は、体の位置情報を正しく把握できなくなり、結果として筋肉が過剰緊張を起こします。
今回の施術では、
①トリガーポイント鍼で筋緊張を解除し、
②機能神経学的トレーニングで脳に正しい感覚入力を再教育したことで、「脳が正しい筋肉の使い方を思い出した」と言えます。
8. 同じような症状で悩む方へ
「ただの疲れだから」と諦めていませんか?
「病院で異常なし」と言われても、神経系のバランスの乱れが隠れていることは珍しくありません。
今回の男性のように「家族ともっと笑って過ごしたい」という気持ちがあるなら、
一度、神経学的視点からの評価を受けてみてください。
参考・出典
-
Travell, J.G., & Simons, D.G. (1999). Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual.
-
Kandel, E.R., et al. (2021). Principles of Neural Science.
-
Schmahmann, J.D. (2019). The cerebellum and cognition. Neuroscience Letters.
-
Tsao, H., & Hodges, P.W. (2008). Immediate changes in feedforward postural adjustments following voluntary motor training. Journal of Applied Physiology.