
はじめに
こんにちは。大阪府枚方市にある「はる鍼灸整骨院」の院長 島井 浩次です。
当院には、介護職や看護職といった「人を支える」お仕事をされている方が多く来院されます。
そして皆さん口をそろえてこう言います。
「腰が痛いのは、この仕事をしている限り仕方がない」
「年齢を考えたら当たり前」
でも、本当にそうでしょうか?
今日は、「仕事だから仕方ない」と諦めかけていた40代女性介護職の腰痛が、なぜ改善できたのかについてお話しします。
もしあなたが、同じように「買い物すらつらい」「歩くのが怖い」と感じているなら、ぜひ最後まで読んでみてください。
「歩くのも怖い」 患者さんとの出会い
「先生、仕事だけじゃなくて、買い物に行くだけでも腰が痛いんです…」
来院されたのは40代女性、介護職歴10年以上。
介護現場での入浴介助や移乗動作は、腰への負担が大きいことをよく理解していました。
「この仕事をしている限り、腰が痛いのは仕方ない」と自分に言い聞かせてきたそうです。
しかし、最近は状況が変わってきました。
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スーパーで買い物カゴを持って歩くと、腰がズキズキと痛む
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洗濯物を干すと、途中でしゃがみこむほどつらい
「歩くのが怖いんです」
その言葉には、仕事を続けたい気持ちと、痛みへの恐怖が入り混じった切実さがありました。
初診時の状態と検査結果
痛みの原因を探るため、筋肉と神経機能の両方を詳しく評価しました。
筋肉の状態
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大腿筋膜張筋・中殿筋・梨状筋に多数の圧痛点が確認されました。
特に中殿筋を押さえたとき、彼女は「そこそこ!」と声をあげるほど強い反応がありました。
これらの筋肉は股関節と骨盤を支える重要な役割を担っており、ここにトリガーポイントが形成されると腰に放散痛が起こることがよくあります。
神経学的所見
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小脳機能低下のサイン
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片足立ちテストでは、右足でのバランスが2秒ほどしか保てませんでした。
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足趾の識別覚異常
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右足の中指と薬指を同時に触れると、両方を「中指」と感じてしまう状態でした。
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触覚が曖昧になると、無意識のうちに荷重コントロールが乱れ、腰や股関節に過剰な負担がかかることが知られています。
施術の流れ
① トリガーポイント鍼治療
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大腿筋膜張筋・中殿筋・梨状筋へ刺鍼。
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中殿筋への刺鍼時、腰に「ズーン」と響く関連痛が再現されました。
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施術後、前屈動作での痛みがその場で軽減しました。
② 機能神経学的アプローチ
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小脳活性化エクササイズ
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視線追従運動(パースート)と片足立ちバランス課題を右側優位で実施。
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足趾の識別覚トレーニング
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タッピングや異なる材質の刺激を用いて、足趾ごとの感覚を再教育。
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これにより、徐々に右足の荷重コントロールが安定していきました。
経過と変化
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3回目施術後:「買い物中の腰痛が半分くらいになった」
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5回目施術後:「洗濯物を干しても腰が痛くならない」
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8回目施術後:「介助動作で途中休むことがなくなった」
彼女は笑顔で「仕事を辞めなくてすむかも」と話してくださいました。
考察
介護職の腰痛は「筋肉の使いすぎ」だけが原因ではありません。
今回のケースでは、
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小脳機能低下 → バランス制御不良
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足趾識別覚の異常 → 荷重分布の乱れ
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股関節周囲筋のトリガーポイント形成 → 腰への関連痛
という複合的な要因が絡んでいました。
痛い場所だけに鍼を打つのではなく、神経機能の評価と改善を組み合わせることが回復の鍵となります。
まとめ と メッセージ
「介護職だから仕方ない」「年齢のせい」と諦めていませんか?
この患者さんのように、神経と筋肉の両方にアプローチすることで、日常生活の痛みまで改善するケースは少なくありません。
もし今、同じように「歩くのも怖い」「家事すらつらい」と感じているなら、一度体の神経機能まで含めた評価を受けてみてください。
院長メッセージ
こんにちは。「はる鍼灸整骨院」の院長 島井浩次です。
このブログを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
介護のお仕事をされている方、家事や育児を頑張っている方、そして自分の時間すら後回しにして誰かのために動き続けている方、
あなたは、きっととても優しい方だと思います。
でも、その優しさの裏で、体はずっとあなたにSOSを出し続けていたのではないでしょうか。
「腰が痛いけど、これくらいで休むわけにはいかない」
「痛いのは仕事のせいだし、仕方ない」
「もう年齢のせいだから、改善は無理」
当院に来られる多くの方が、最初はそうおっしゃいます。
でも、実際に施術を受けていただくと、ほとんどの方がこう言われます。
「もっと早く来ればよかった」
「こんなに体が軽くなるなんて思わなかった」
なぜかというと、痛みの原因は「年齢」や「職業」だけではないからです。
筋肉のトリガーポイントや、バランスを取る神経の働き、足の感覚の異常など、目に見えない“体の使い方のクセ”が、痛みを増幅していることが多いのです。
そして、そのクセは適切な評価とアプローチをすれば変えられるものです。
もし、今この記事を読んでいるあなたが、
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「歩くのも怖い」
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「家事すらつらい」
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「この痛みは仕事だから仕方ない」
と思っているなら、ぜひ一度ご相談ください。
痛みがなくなることで、また自分らしい毎日が取り戻せます。
「痛みを我慢して働く」のではなく、「痛みを気にせず笑顔で動ける自分」に戻るお手伝いをさせてください。
私たちは、あなたが再び笑顔で過ごせるよう、全力でサポートします。
参考・出典論文
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Simons DG, Travell JG, Simons LS. Travell & Simons' Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual. 2nd ed.
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Sherrington CS. The Integrative Action of the Nervous System.
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Taube W, Gruber M, Gollhofer A. Spinal and supraspinal adaptations associated with balance training and their functional relevance. Acta Physiol (Oxf). 2008.
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Hashimoto T et al. Proprioceptive training improves balance in elderly: effects on cerebellar function. Neurosci Lett. 2020.