
はじめに:ごあいさつと自己紹介
こんにちは。「はる鍼灸整骨院」院長の島井浩次です。
これまで数多くの大人の不調に寄り添ってきた私ですが、ある日、小さなお子さんを連れて来られたお母さんの涙に心を動かされました。
「夜泣きがひどくて…」
「抱っこしても泣き止まないんです」
「私、母親としてダメなんじゃないかって…」
そんなお声を聞くたびに、育児という大きなチャレンジの中で孤独を感じている方が多いことを実感します。
今回のブログでは、実際に小児はりによってお子さんの変化を経験されたお母さんのストーリーをもとに、「やさしく、でも確かに効く」刺さない小児はりの可能性を、一般の方にも分かりやすく、専門的な視点も交えてご紹介します。
1:泣き止まない我が子と、泣きたい私
「昨日も1時間おきに起きて…。もう、私の体も心も限界でした」
そう語ってくれたのは、1歳2ヶ月の男の子を育てる30代のお母さんでした。
初めての育児。周囲からは「赤ちゃんってそんなもんだよ」と言われ、かかりつけの小児科では「成長とともに落ち着くから、様子を見ましょう」との返答。
でも、毎晩毎晩続く夜泣き、
昼間もご機嫌な時間はほんのわずか。
ちょっとした音や光に過敏に反応しては泣き出すわが子。
「まるで、神経がむき出しになっているみたいでした」とお母さんは言います。
例えるなら、電気がビリビリ通ったままのむき出しの電線が、空中を漂っているような状態。
ちょっと風が吹いただけでスパークして、バチバチ音を立てる。
そんな風に、彼の小さな身体は常に過敏に反応していたのです。
2:「育てにくい子」なんていない。自律神経の未発達が原因かもしれない
このようなケース、実は珍しくありません。
多くの赤ちゃんは、生まれてすぐの時点で自律神経系(交感神経と副交感神経)のバランスがまだ未熟です。
とくに現代は、出産前後のストレス、出産方法、周囲の環境音、照明、生活リズムの影響もあり、交感神経(緊張・覚醒)ばかりが優位になりやすく、副交感神経(リラックス・回復)が働きにくくなっています。
赤ちゃんがピリピリして見えるのは、その自律神経のアンバランスが関係している可能性が高いのです。
例えば、車でたとえるなら…
- アクセル(交感神経)は踏み込まれているのに、
- ブレーキ(副交感神経)がほとんど効かない状態。
だから眠れない。休めない。泣くことでしか不快感を伝えられない。
そしてそれが続くと、親も疲弊していく…という悪循環に入ってしまうのです。
3:病院では「異常なし」でも、親の直感は正しかった
前述のお母さんは、「何かがおかしい」と思い、小児科にも何度も相談しました。
でも、検査に異常は見つからず、「個人差の範囲内」「成長を待ちましょう」という言葉しか返ってこなかったそうです。
親の直感というのは、とても大切です。
毎日お子さんと過ごしているからこそ、「これは普通じゃない」「この子は今、つらいんじゃないか」と感じる。
それは、医学の検査では数値化できない、でも確かな“育児センサー”です。
このお母さんも、そのセンサーを頼りに、「少しでも楽になる方法はないか」とネットで調べ、当院の「小児はり」にたどりつきました。
4:刺さない、痛くない「小児はり」とは?
「はり」と聞くと、「子どもに針!?」と驚かれる方も多いと思います。
でもご安心ください。
小児はりで使う道具は、大人の鍼とはまったく違います。
刺しません。
痛みもありません。
むしろ、赤ちゃんが心地よくなって眠ってしまうほどやさしい刺激です。
使用するのは、丸みを帯びた金属のヘラのような器具や、小さな棒状のローラー。
それを使って、背中やお腹、手足をやさしくなでたり、軽くトントンとタッピングするだけ。
まるで、赤ちゃんの身体の“センサー”にそっと触れて、「もう大丈夫だよ」「安心していいんだよ」と語りかけるような施術です。
5:施術後の変化——少しずつ「静けさ」が戻ってきた
最初の施術後、お母さんは「寝る前のギャン泣きが、ちょっと穏やかになった気がします」と話してくれました。
2回目の施術後には、「昼間に10分くらい、ひとりでおもちゃで遊ぶ時間が出てきたんです!」と驚きの声。
そして3回目には、あんなに苦しんでいた夜泣きが、ついに「1回だけ目を覚ましたけど、すぐに寝ました」と報告を受けました。
施術そのものはほんの数分。
でも、その積み重ねが赤ちゃんの神経システムに「安心」の記憶を刻んでいきます。
交感神経の過剰な働きが静まり、副交感神経がじんわりと目を覚ます——
まるで、春の朝に凍った湖の氷が静かに解けていくように。
6:変わったのは子どもだけじゃなかった
「私も、やっと笑えるようになったんです」
そう話してくれたお母さんの表情には、以前のような不安や焦りはありませんでした。
赤ちゃんの変化は、親の安心につながります。
そして、親の安心は、子どもにとって何よりの“安全基地”になります。
育児というのは、赤ちゃんだけでなく、親自身も“育て直されている”ようなもの。
だからこそ、「親の心」に寄り添える施術が必要なのだと、私たちは考えています。
7:育児に「答え」はないけど、「選択肢」はある
「うちの子、寝ないタイプなのかも」
「性格が敏感なのかも」
「私の育て方がいけないのかな…」
そんな風に悩んでいる方へ、声を大にして伝えたいです。
あなたのせいじゃありません。
ちゃんと“からだ”に原因があるかもしれないんです。
そしてその原因は、「やさしく触れるだけ」の刺激で変えられる可能性があるんです。
小児はりは、まだまだ知られていない分野ですが、確かな理論と技術に支えられた「科学とやさしさのかたまり」のような療法です。
おわりに:未来の育児に、小児はりという安心を
子どもの不調と向き合うとき、
育児に行き詰まったとき、
誰にもわかってもらえない気持ちに押しつぶされそうなとき
「もう一人で抱えなくていいんだ」
「こんな方法があったんだ」
そう思える選択肢のひとつとして、小児はりがあればと願っています。
出典・参考文献
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小児はり学会 編『小児はり入門』医道の日本社, 2018
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鶴岡正也ら「新生児期の自律神経機能と発達障害の関連」自律神経, 2014
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Hohmann, E., et al. “Noninvasive stimulation in pediatric care: A systematic review.” Pediatric Research, 2020.
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鍼灸医学雑誌『乳児の夜泣きに対する鍼灸の有効性』2021