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~身体と脳をつなぐ、見えない作用の科学~


鍼灸は、中国古代から数千年にわたり継承されてきた伝統医療であり、日本では江戸時代から発展してきました。

かつては「気の流れ」や「経絡」など、経験則に基づいた説明が中心でしたが、近年では、現代医学の視点から鍼灸の作用メカニズムが次々と明らかになりつつあります

本記事では、一般の方にも理解しやすく、かつ科学的な裏付けのある鍼灸のメカニズムを紹介します。

 

1. 鍼はなぜ痛みを和らげるのか?


● オピオイド受容体を介した鎮痛作用

鍼を刺すことで、脳内や脊髄内に「内因性オピオイド」と呼ばれる物質(エンドルフィン、エンケファリンなど)が分泌されます。

これは、モルヒネのような鎮痛効果をもつ天然の神経伝達物質であり、オピオイド受容体に結合して痛みを抑えます。

これはちょうど、脳が自ら「痛み止め」を出しているようなものであり、薬に頼らない安全な方法です。

特に、慢性痛やがん性疼痛の分野では注目されています。


 

● アデノシンA1受容体を介した鎮痛

さらに近年の研究では、鍼刺激部位の細胞からアデノシンという物質が放出され、その物質がアデノシンA1受容体に作用して痛みを緩和することが分かっています。

これは末梢神経のレベルで痛みの信号を弱める働きがあり、特に局所の鎮痛効果に関与しています。


 

2. 痛みをブロックする「ゲートコントロール説」


1965年に提唱されたゲートコントロール説は、痛みの科学に革命を起こしました。

この説では、脊髄後角に「痛みのゲート」が存在し、そこを通る神経信号のバランスによって痛みの感じ方が決まるとされます。

鍼による刺激は、触覚や圧覚を伝える太い神経線維(Aβ線維)を活性化し、このゲートを閉じる働きをします。

結果として、痛み(C線維やAδ線維)が脳に届きにくくなり、痛みが和らぐのです。

「刺されたのに、痛みが和らぐ」という逆説的な効果の背景には、この理論があります。


 

3. 筋肉の緊張を緩める仕組み:Ⅰa・Ⅰb抑制とは?

鍼刺激は、筋肉や腱に存在する固有受容器(筋紡錘や腱紡錘)からの神経信号を利用して、筋緊張を緩めます。

  • Ⅰa抑制:筋紡錘からの求心性信号が、脊髄で同側の運動ニューロンを一時的に抑制します。これにより過剰な筋収縮が緩みます。

  • Ⅰb抑制:腱紡錘(ゴルジ腱器官)を介した反射で、筋への過大な負荷を避けるための安全装置です。鍼によってこれが促進されると、深層の筋の緊張が和らぐことが知られています。

 

この機構を利用することで、肩こり・腰痛・筋肉のつっぱり感などの緩和が期待できます。

 

4. 鍼で血流が良くなる科学的理由

鍼を刺すと、交感神経の緊張が抑制され、毛細血管が拡張します。その結果、局所の血流が増加し、老廃物の排出や酸素・栄養の供給が改善されます。これには以下の要素が関係します:

  • NO(一酸化窒素)の放出

  • サブスタンスPやCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドの関与

  • 末梢交感神経の抑制による血管拡張

 

これらの作用により、筋疲労や冷え性、しびれなどの改善が見込まれます。

 

5. 鍼が内臓に効く?体性-自律神経反射の力

身体のある部分を刺激すると、それに対応する内臓の働きが変化することがあります。

これは「体性-自律神経反射」というメカニズムによるものです。

たとえば、背中の特定の部位(兪穴)を刺激すると、胃や腸、心臓などの内臓機能が調整されることが分かっています。

これは、皮膚・筋肉と内臓が
同じ脊髄分節でつながっているためで、古典の「経穴(ツボ)」の経験則と一致します。

 

6. 離れたツボが効く理由:異分節作用

痛い場所と直接関係のない部位に鍼を打っても症状が改善することがあります。

これは「異分節効果」と呼ばれ、脳内や中枢神経を介した広範なネットワーク反応によって説明されます。

例えば、手や足のツボを刺激することで腰痛が軽減したり、頭痛が和らぐことがあり、これは脳幹や大脳皮質を経由した下行性抑制や、自律神経調整を介して実現されています。

 

7. 下行性痛覚抑制系の活性化

脳には、痛みを抑える回路(下行性抑制系)が存在し、特に中脳水道周囲灰白質(PAG)や延髄網様体が中心的な役割を果たしています。

鍼はこれらの部位を刺激し、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を介して、脊髄レベルで痛みの信号を抑えるのです。

これは、特に慢性疼痛や広範囲の痛みに対して有効とされ、全身性の痛み抑制機構として注目されています。

 

8. 自律神経のバランスを整える

鍼刺激は、交感神経と副交感神経のバランスを調整する効果があります。

これにより、動悸、不眠、便秘、冷え、過敏性腸症候群、自律神経失調症などの症状が緩和されます。

耳介や仙骨周囲の刺激は特に副交感神経を優位にするため、リラクゼーション効果が高く、睡眠障害にも応用されます。

 

9. 鍼と神経伝達物質の関係

鍼を打つことで、神経終末からさまざまな神経伝達物質が放出されます。

代表的なものは以下の通りです。

  • セロトニン:鎮痛・精神安定

  • ドーパミン:運動・意欲

  • ノルアドレナリン:覚醒・血圧調整

  • サブスタンスP:炎症や痛みに関与

  • CGRP:血管拡張作用

 

これらの物質は、単に痛みだけでなく、情緒、消化機能、循環機能、免疫機能にも関わるため、鍼の作用は全身的で多面的です。

 

10. 角質細胞と免疫・内分泌の調整

最新の研究では、鍼刺激が皮膚表面の角質細胞(ケラチノサイト)に作用し、そこからサイトカインやホルモンが分泌されることが明らかになっています。

これにより、

  • 免疫調整(抗炎症作用)

  • 内分泌調整(ホルモンバランスの改善)

が起こるとされており、

これは古典で言う「経皮的気の変化」や「衛気(えいき)の調整」にも通じる考え方です。

 

おわりに:古典と科学の融合が未来の鍼灸へ

東洋医学では「気」「血」「経絡」など、抽象的な表現で身体のバランスを語ってきましたが、現代科学はそれらを神経生理学・免疫学・内分泌学の視点で解析し、より安全で効果的な鍼灸治療へと発展させています。

鍼灸は「心と体のつながり」「局所と全身の相互作用」「過去と未来の融合」とも言える医療です。

その魅力と可能性を、科学と共にこれからも深めていきたいものです。


 


参考文献(出典論文)

  1. Han JS. Acupuncture and endorphins. Neurosci Lett. 2004.

  2. Goldman N et al. Adenosine A1 receptors mediate local anti-nociceptive effects of acupuncture. Nat Neurosci. 2010.

  3. Melzack R, Wall PD. Pain mechanisms: a new theory. Science. 1965.

  4. Takahashi T. Mechanism of acupuncture on neuromodulation in the gut—a review. Neurol Res. 2011.

  5. Napadow V, Ahn A, et al. The status and future of acupuncture mechanism research. J Altern Complement Med. 2008.

  6. Langevin HM et al. Mechanical signaling through connective tissue: a mechanism for the therapeutic effect of acupuncture. FASEB J. 2006.

  7. Kawakita K, Okada K. Acupuncture and adenosine. Auton Neurosci. 2014.

  8. Mori H et al. Reflex mechanisms of acupuncture. J Auton Nerv Syst. 2000.

  9. Zhou W, Benharash P. Effects and mechanisms of acupuncture based on the principle of meridians. J Acupunct Meridian Stud. 2014.

     

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