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~トリガーポイント鍼治療と機能神経学で「音のない静けさ」へ~

「キーン」という音と、消せない違和感

40代前半、会社員の山本美奈子さん(仮名)は、ある日ふと「耳の奥で鳴っている小さな音」に気づきました。

それは「キーン」「ピー」という高い音。

最初は「疲れかな」と流していたものの、気がつけば日常のどんな瞬間にも、その音はしぶとく寄り添ってきました。

会議中も、静かな夜も、車の中でも…。

そして、それと並行して現れたのが「顎のこわばり」でした。

無意識に食いしばり、頬が重たく、朝起きるとこめかみや首が痛い。

耳鼻科では「異常なし」。

脳のMRIも「特に問題なし」。

原因不明の不快症状は「気のせい」として処理されかけていました。

そんなときに彼女が出会ったのが、「三叉神経」というキーワード、そして鍼灸と機能神経学の治療でした。


 

三叉神経とは何か? 顔の“司令塔”

三叉神経(さんさしんけい)は、私たちの顔の感覚を担当する、頭蓋神経のひとつ。

名前の通り、「三つに分かれた」枝を持ちます。

  • 第一枝:眼神経(おでこ・目のまわり)

  • 第二枝:上顎神経(頬・鼻の周囲)

  • 第三枝:下顎神経(顎・口の周囲)

つまり、顔全体の皮膚感覚、咀嚼筋(そしゃくきん:噛む筋肉)の運動指令まで担っている、顔面の"ハブ神経"なのです。

この神経が過敏になったり、逆に機能が低下したりすると、顔まわりの不調(痛み、違和感、こわばり)、さらには耳鳴りのような症状にも影響を与えると考えられています。


 

神経の「刺激不足」が招く機能低下

美奈子さんの生活を聞くと、耳鳴りの発症前から、

  • 長時間のデスクワーク(1日10時間以上)

  • スマホ使用も含めたスクリーンタイムが1日12時間超

  • 会話の少ない職場環境

  • 運動習慣なし

  • マスク生活が続いていた

という日常が明らかになりました。

これらは、三叉神経の刺激不足に直結する環境です。

神経は「入力」がなければ機能が鈍っていきます。

たとえばピアノも、弾かなければ指がなまります。

神経も同じです。

とくに顔の筋肉や感覚は、話す・食べる・表情を動かすことで常に刺激されているのが正常状態

ところが、マスク生活、会話の減少、スマホ操作中の無表情、これらは三叉神経にとって「冬眠」のようなもの。

さらに、美奈子さんは「呼吸が浅い」「肩こりが強い」「首の筋肉がいつも硬い」という状態で、これも神経機能の低下を助長していました。


 

視覚の影響と姿勢の崩れ

三叉神経は、目のまわりの筋肉(眼輪筋など)にもつながっています

そのため、「見る行為」は三叉神経への重要な入力源でもあるのです。

長時間の画面作業は、視線が一点に固定され、眼球運動が制限されます。

眼球が動かなければ、周囲の筋肉も動かず、刺激が減ります。

さらに、目が疲れれば自然と顔をしかめ、首を前に突き出す姿勢になります。

この姿勢は、顎関節を圧迫し、咀嚼筋を緊張させ、三叉神経に継続的なストレスを与えることにつながります。

つまり、視覚疲労は三叉神経の過敏化や誤作動を引き起こしやすいのです。


 

「呼吸」と「耳の筋肉」が神経に与える決定的な影響

美奈子さんの症状の鍵を握っていたのは、「呼吸の浅さ」だけではありませんでした。

彼女が特に気にしていた「耳の中で音が響く感覚」は、ある小さな筋肉の存在によって説明がつくようになりました。

それが、鼓膜張筋(こまくちょうきん)です。

 

◯ 鼓膜張筋とは?

鼓膜張筋は、鼓膜の緊張状態を調節する超小型の筋肉です。

その働きは、まるで太鼓の皮をピンと張るチューナーのような役目

音の振動を調整することで、耳の中の圧力や響き方に関与しています。

この筋肉は、じつは三叉神経の第三枝(下顎神経)によって支配されています

つまり、三叉神経に異常があれば、鼓膜張筋の緊張調整もうまくいかず、「耳の詰まり感」や「響きすぎる感じ(自己声の反響)」、そして「耳鳴り」へとつながるのです。

 

◯ 鼓膜張筋が不調になると?

  • 自分の声がやたらと響く(自声強調)

  • 無音状態で「キーン」という振動が持続する

  • 耳抜きしてもスッキリしない

  • ストレスや食いしばりで悪化する


​これらは、鼓膜張筋の緊張亢進もしくは機能不全によるものと考えられます。

 

◯ どうして機能が乱れるのか?

  • 三叉神経の過敏化や伝達異常(姿勢や筋肉の過緊張)

  • 呼吸の浅さによる内圧調節の障害

  • 咀嚼筋や顎関節の緊張による周辺圧迫

  • 顔面表情筋の不活動による入力不足

  • スクリーンタイム過多による姿勢性の負荷

特に、美奈子さんのように顎関節周囲の緊張が強く、呼吸が浅く、顔の動きが少ない方では、三叉神経の末梢末端である鼓膜張筋への制御がうまく働かず、鼓膜の振動が異常に感じられたり、脳が誤って「異音」として認識するようになります。

これは、いわば「耳のピントが合わない状態」です。


 

治療の出発点 - 評価と施術

このような背景を踏まえ、美奈子さんの施術では以下の点を特に重視しました。

 

  • 顎関節と咀嚼筋の緊張の調整(=三叉神経の抑制)

  • 呼吸筋と横隔膜の機能回復(=自律神経の正常化)

  • 鼓膜張筋に関係する外耳道周囲のリリース(耳介筋や側頭筋への鍼)

  • 表情筋と顔面感覚への入力(=三叉神経の適正刺激)

  • 眼球運動を含む前庭・視覚の統合リハビリ(=小脳との連携強化)


     

週1回 × 15回の治療経過

以下は、美奈子さんの週ごとの経過の一部です。

 

  • 1~3回目
     顎の違和感に軽い改善。耳鳴りは依然継続。
     初回終了後に「呼吸が深くなった」と自覚。

  • 4~6回目の補足

 顎の開閉時の違和感に加えて、「耳の奥の詰まり感」が軽減。
 外耳道の周囲(耳の後ろ)に鍼を加えた後、「耳が開いたような感覚があった」と報告。

  • 7~9回目の補足
     呼吸が深くなり、咀嚼筋の緊張が明確に緩んできた時期。
     鼓膜張筋への間接的アプローチにより、「耳の中の音の響き方が穏やかになった」と表現。

  • 10~12回目
     耳鳴りの出現頻度が減少。「朝は鳴っていないことが増えた」。
     顎の可動域がほぼ正常化。

  • 13~15回目
     耳鳴りは完全には消えないが、「気にならないレベルに落ち着いた」。
     仕事の集中力も回復し、夜の寝つきも改善。


     

「治る」のではなく「整う」

美奈子さんの場合、耳鳴りや顎のこわばりの原因は「器質的な異常」ではなく、神経系の機能的誤作動にありました。

それを「トリガーポイント鍼治療」と「機能神経学的リハビリ」で“再学習”させることで、症状は緩解しました。

完治ではありませんが、「自分の体が整っていく感覚がある」「耳鳴りはあるけれど気にならない」「顔のこわばりがとれて明るくなったと言われる」と話す彼女の表情は、初診時とはまったく異なっていました。


 

耳の中の小さな筋肉が、静寂をつくる

耳鳴りというと「内耳」や「脳」の問題ばかりが注目されがちですが、
鼓膜を動かす小さな筋肉の緊張と、それを支配する三叉神経の機能不全こそ、実は“音”をつくる大きな要因だった、というケースもあります。

もし、耳鳴りが「鳴っているような気がする」「響いている気がする」だけのものなら、
それは耳の中の筋肉や神経が「迷っているサイン」なのかもしれません。

あなたの耳鳴りも、小さな筋肉と神経の調整で変わるかもしれません。


 


参考・出典論文

  1. Møller AR. Pathophysiology of Tinnitus. Otolaryngol Clin North Am. 2003.

  2. Borsook D et al. Neural mechanisms of pain in temporomandibular disorders. Pain. 2011.

  3. Sessle BJ. The role of the trigeminal system in pain. Headache. 2011.

  4. Budd K et al. Neuropathic mechanisms in orofacial pain. Pain. 2020.

  5. Kato M et al. Central representation of facial proprioception in human cerebral cortex. J Neurosci. 2019.

  6. Fukuda Y. The role of the tensor tympani muscle and the trigeminal nerve in tinnitus. Auris Nasus Larynx. 2012.


     

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