〜視覚・姿勢・自律神経を整えて、根本からの回復を〜

1. はじめに
-
スマホ依存と身体不調の関係
-
今回は「胃腸の不調」とスマホ使用の関連について解説します。
2. 機能性ディスペプシアとは?
-
機能性ディスペプシア(FD)の定義と主な症状
-
明確な器質的異常がないのに生じる胃の不調
-
自律神経の乱れ、ストレス、生活習慣の影響が大きいとされる
3. 20歳男性の症例紹介
-
主訴:食後の胃もたれ・膨満感・食欲不振
-
胃カメラや血液検査では異常なし→機能性ディスペプシアの診断
-
1日10時間以上のスマホ使用(YouTubeやSNS視聴)
-
猫背・前屈み姿勢が習慣化し、呼吸が浅く、会話中も目線が落ち気味
4. 原因と推察される神経学的メカニズム
① 視覚入力の過負荷
-
画面を凝視することで視蓋〜中脳の疲弊
-
網様体賦活系の低下による自律神経の調節力低下
② スマホ姿勢による迷走神経の機能障害
-
胸郭の狭まりによって呼吸筋・横隔膜が抑制される
-
横隔膜の動きが鈍ることで、迷走神経への機械的刺激が減少
③ 長時間の交感神経優位状態
-
SNSや動画による精神的覚醒・中枢興奮
-
消化機能は副交感神経(迷走神経)支配のため、交感神経優位だと抑制される
5. 治療方針とアプローチ
◎ 家庭での取り組み
-
スマホ使用時間を1日4時間以内に制限
-
「ブルーライトカット」「画面から目を離す20-20-20ルール」なども指導
◎ 院内での施術内容
① 呼吸筋へのアプローチ
-
胸郭と横隔膜の可動域改善 → 迷走神経刺激の増加
-
呼吸の質の改善が、神経機能と内臓機能に波及
② 機能神経学的入力刺激
-
前庭・眼球運動による脳幹再活性
-
特定方向の頭部・眼球運動や、体幹バランス刺激を段階的に実施
③ 鍼灸による自律神経調整と胃腸賦活
-
中脘、足三里、梁丘などの体性-内臓反射を活用
-
刺鍼による軸索反射で局所血流と副交感神経トーンを上げる
6. 治療経過と結果
-
初回施術後から「食後の重さが軽くなった」と報告
-
3週目には「夕方の膨満感が減った」
-
スマホ時間も家族と協力して制限でき、睡眠の質も改善
-
6週目には「ご飯が美味しく食べられる」と回復傾向
7. まとめ
-
現代の生活習慣は、神経系に静かなストレスを与え続けている
-
視覚・姿勢・呼吸といった「外からの入力」が、内臓の働きに大きく影響
-
神経学的アプローチ+生活指導+鍼灸の組み合わせで、「機能の回復」を目指すことが可能
使用した文献・参考論文(一部)
-
Tack J, Talley NJ. Functional dyspepsia: symptoms, definitions and validity of the Rome III criteria. Gut. 2006.
-
Gershon MD. The Second Brain: A Groundbreaking New Understanding of Nervous Disorders of the Stomach and Intestine.
-
中村隆一『自律神経と内臓機能—迷走神経の役割』
-
Carrick F. Brain-based therapy in the functional neurology paradigm. Functional Neurology and Chiropractic.